世界は呆然、本人だけが極楽とんぼ
菅首相がG8で体現した「自分に自信のない人間の行動パターン」

フランスのドービルで開かれた先進国サミット〔PHOTO〕gettyimages

 フランスのドービルで開かれた先進国サミットは、福島原発事故を受けて、さながら原発サミットとなった。ドイツやスイスは脱原発に大きく舵を切ったが、アメリカやフランスは断固原発維持である。中国など、先進国の仲間入りをしようとしている国々は、経済成長に伴い電力需要が高まるために、原発推進が基本方針である。

 ドイツにしても、足りない電力はフランスから輸入するが、そのフランスの電力の約8割は原子力発電によってまかなわれている。経済(economy),エネルギー(energy), 環境(environment)の三つのEのバランスをどうとるかが問題なのであって、その事を考えない単純な原発廃止論には与できない。

 さらには、電源構成をどうするかといった供給面のみならず、需要面にもメスを入れる必要がある。それが、生活様式や生産方式の見直しということであり、現代文明そのものを論じることになる。

 サミットでの菅首相の発言を見てみると、実現可能性についての検証を行った上での政策提言とは思えない。自然エネルギーの発電割合を2020年代早期に2割に引き上げる案など、その典型である。

 太陽光発電を推進するのはよいが、太陽光パネル1000万戸設置案は、担当の海江田経産相も知らなかったという。

 菅首相は、このような「思いつき」発言をこれまでも繰り返してきた。それが、震災対応に大きな禍根を残したことは周知の通りである。

 しかし、サミットの場での首相の発言は、日本国としての公約となる。その重さを菅首相は分かっているのであろうか。

能力のない指導者ほどサミットでは有頂天に

 自分に自信の無い者は、誰かに会って、自分の知らないことを教えられると、すぐにそれを信じてしまう。そして、あたかも自分が以前から知識が有ったような振りをして、それを吹聴する。そして、その結果、問題が生じれば、その意見を具申した者の責任にする。

 これが、菅首相の行動パターンであり、何人もの内閣参与の発言や辞任劇がそれを物語っている。このような人物はリーダーとして失格であり、即刻職を辞するべきである。

 問題は、菅首相に、自分の資質についての正しい認識が無いことであり、従って辞任する気が毛頭無いことである。

 サミットのような場では、公式晩餐会や二国間首脳会談など、形式的なプロトコールが多く用意されているし、それを世界のメディアが報道する。そこで、各国首脳は、能力のない指導者であればあるほど、有頂天になってしまう。

 「国内では批判はあっても、俺は世界では認められている」と誤解してしまう。菅首相が、まさにその典型である。国内でも、世界でも呆然としているのに、本人だけが極楽とんぼなのが、菅直人という人物である。

 菅首相は29日に帰国した。30日からの週は、内閣不信任案などの提出が予想され、政局となるであろう。政局は野党が主導するものではなく、政権政党である民主党の中からの動きが重要である。

 しかし、小沢一郎氏もまた、政治とカネの問題で出口なしである。カネの問題で清潔で、しかも政策能力に秀でた政治家が党派を超えて結集するしか、この国を救う道はないのではないか。まずは、民主党の中から、そのような人物や集団が手を挙げることを期待する。その際には、私も戦力の一端として、そのチームに参加することに吝かではない。

 自民党と公明党は内閣不信任案を共同で提出する予定だという。しかし、それが可決されるためには、民主党内部から80人以上の賛同者が必要であり、それは容易に集まる数ではない。執行部も締め付けを強化しているし、小沢氏もかつてのような力はない。

 しかしながら、この震災対応の最中に、内閣不信任案が提出されること自体が、いかに菅首相への不信感が高まっているかの証左である。

 5月30日掲載の日経新聞世論調査によれば、「菅首相は交代すべき」という意見が7割を占めている。やはり、菅首相は、退く道を模索すべきである。

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