中国
ストラスカーンを接待外交で「籠絡」
IMF利権を狙う中国が目指す「専務理事」の椅子

元をドル、ユーロにつぐ第三の基軸通貨に
「IMF」中国語HPより

 IMF(国際金融基金)トップのストラスカーン専務理事のアッと驚く「強姦未遂辞職」を受けて、次期専務理事レースの行方が俄然、世界の耳目を集めている。そんな中、「世界第2の経済大国」にのし上がった中国が、専務理事ポストの獲得へ向けて、急ピッチで動き出した。中国の経済官僚が語る。

「IMF専務理事に中国人が就くことは、人民元をドル、ユーロに続く第3の基軸通貨にしようという『人民元国際化戦略』の大変重要な一里塚だ。われわれは当初、2020年くらいを目標にしてきた。まずは、過去45年間にわたって日本が独占しているアジア開発銀行総裁のポストを取ることが先決と考えていたからだ。

 ところが、2008年秋のアメリカ発の金融危機と昨年のユーロ危機によって、欧米神話が崩壊し、今回のストラスカーン事件がダメ押しとなった。過去65年間にわたってヨーロッパ人が独占してきたIMF専務理事のポストには、第2の経済大国であるわが国の代表が就くのが、いまの世界経済の実態に即している」

 実際、中国メディアも喧しくなってきた。中国最大の国際ニュース紙『環球時報』(5月26日付)は、次のような内容の記事をトップに載せた。

〈 アメリカ人が世界銀行総裁に就き、ヨーロッパ人がIMF専務理事に就くという慣習は、もう長く、世界の与論から「奇怪なこと」と捉えられてきた。ユーロ危機の中、このままヨーロッパ人がIMF専務理事職を続けるのは、出来の悪い生徒が出来のいい生徒を教えるようなものだ。ヨーロッパ人は、なぜ中国を始めとする新興国家群の中から次期専務理事を選ぶことを恐れているのか。

 中国人が専務理事になれば、ユーロ危機への対処もより客観的にできるし、IMFを牛耳ってきたヨーロッパ人に積年の恨みを抱く新興国家群への慰安にもなるではないか。それでもヨーロッパ人が専務理事に固執し続けるならば、IMFは21世紀の世界の趨勢から遠く乖離してしまうことになる。世界は、中国がすでに第2の経済大国であるという現実を、軽々に考えるべきではない 〉

 こうした中国の主張を聞くと、中国は今回、突然降って沸いたように、IMF専務理事の話を持ち出し始めたように映るが、それは違う。

 実は3年前から、「IMF利権奪取」に向けた深遠な国家戦略を立ててきたのだ。それは上述の経済官僚も指摘しているように、中国はIMFにおける自国の権益拡大を、人民元国際化のための「必要条件」と捉えてきたから

専務理事をたらし込んだ「北京の接待」

 話は2008年9月に遡る。アメリカ発の金融危機を受けて、当時の中国は、「IMF利権奪取」のチャンスと見た。そこで第1弾として、同年11月にワシントンで開かれた第1回目のG20(主要国サミット)で、胡錦濤主席が、「いまこそ世界経済の実態に合ったIMF改革を断行すべきだ!」と声高に述べた。同時期に開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議でも、周小川・中国人民銀行総裁が、同様の発言をしている。以後、中国首脳は事あるたびに、こうした発言を繰り返すようになった。

 第2弾は、2009年6月に、「IMF債を最大500億ドル分購入する」と発表したことだった。中国は、世界最大の外貨準備保有国であることにモノを言わせ、札束で「IMF包囲網」に出たのである。

 そして第3弾が、昨年5月に、朱民・中国人民銀行副総裁がストラスカーン専務理事特別顧問に就任したことだった。

 IMFは永年の伝統として、ヨーロッパ人がトップの専務理事に就き、補佐役の3人の理事には、アメリカ人が筆頭理事に就き、残り2席を日本人とアジア以外の大陸の代表(現在はブラジル人)が分け合うことになっている。つまり、現行制度を踏襲している限り、中国は半永久的に、専務理事はおろか、理事にさえ就けないのである。

 そこで中国は、名うてのプレイボーイとの異名を取るストラスカーン専務理事を、2009年11月にわざわざ北京に招いて、得意の接待外交に当たった。その結果、「専務理事特別顧問」なる役職をでっち上げて、中国きっての国際派経済学者である朱民氏を、IMF理事会に押し込んだのだ。

 そして第4弾として、ついに昨年暮れのIMF総会で、議決権改定の承認を取り付けたのだった。それまで中国は、議決権が6位(3・65%)だったが、アメリカ、日本に次ぐ3位(6・07%)までポジションを上げたのである。

 このように、中国のIMF利権獲得へ向けた執念は、凄まじいものがある。「国連安保理の常任理事国入り」の掛け声ばかり唱えている日本とは、天と地の差だ。

 さて、そんな経緯を経て今回。降って湧いた千載一遇のチャンスに、中国が初代中国人専務理事候補として擁立を図っているのが、前述の朱民・専務理事特別代表というわけだ。

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