長谷川幸洋「ニュースの深層」
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鳩山首相が最後に仕掛けた
「小沢一郎へのクーデター」

窮ポッポが猫を噛む

2010年06月03日(木) 長谷川 幸洋
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 鳩山由紀夫首相が6月2日、退陣を表明した。突然だった。しかも小沢一郎民主党幹事長を道連れに。いったい、いつ決断したのだろうか。

 鳩山は退陣表明した両院議員総会で、「訪問していた韓国のホテル滞在中に自宅で飼っているのと同じヒヨドリを見て、『もう自宅に戻ってこい』と呼びかけているように思えた」と心境を語っている。いかにもロマンチックな鳩山らしい。こんなエピソードにまず嘘はない。ということは、5月末から退陣の腹を固めつつあったとみていい。

 そうだとすると、前夜まで流れていた「続投に意欲満々」という多くのメディアの見立ては、まったく違っていたことになる。

 鳩山は表向きの言葉とは裏腹に自らの退陣を前提にして、その後の政局をにらんでいた。最後にして最初の大仕事に挑んだ格好である。

 思えば、1日夕方に小沢との会談を終えた後、親指を立て笑顔でグッドサインをした鳩山と、苦虫をつぶしたような小沢の渋い表情が事態を象徴していた。

 続投を狙った鳩山が「小沢の支持を勝ち取った」と思われたが、実際は話が逆だった。鳩山は自らの退陣とセットで小沢を辞めさせるのに成功したのだ。

 ずばり言えば、今回の退陣劇は鳩山が政治生命を賭けて仕掛けた「小沢に対するクーデター」という側面がある。

 小沢にしてみれば、誤算だったに違いない。

 小沢は自らの政治資金問題で検察審査会から「起訴相当」の議決を受けたが、その後、東京地検は再び不起訴処分を決め「当面は逃げ切った」と思われていた。

 それまで、ガソリン税暫定税率廃止の先送りや高速道路料金見直しなど主要政策課題で小沢の言いなりだった鳩山が突然、自分に辞任を迫ってくるとは思いもよらなかったはず、とみるのが自然だ。

 捨て身で反乱した鳩山に追い込まれた小沢。これが今回の基本構図である。

 小沢はこれからどう立て直すのか。

 4日の両院議員総会がヤマ場になるが、後継代表・首相は菅直人副総理兼財務相が最有力であることに変わりはない。菅はこれまで小沢との対立を注意深く避けてきた。小沢の新年会にも顔を出している。

 加えて財務相に就任してから増税路線に大きく舵を切って、財務省・霞が関も味方につけている。水面下で政治資金問題がくすぶり続けている小沢に、「財務・国税を敵に回したくない」と考える動機がある。財務省との友好的関係をてこにして、菅は小沢に切り札を握った形である。

 小沢にすれば、菅はもっとも無難な選択といえる。

 だれが首相になるとしても、民主党内は従来にも増して小沢と反小沢の対立が激しくなるに違いない。鳩山退陣によって突然生じた「政治空白」が、必然的に勢力拡大を目指す主要なアクターたちのパワーゲームを余儀なくさせるからだ。

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