ショックに弱い日本株はいまこそ「買い」だ
ギリシャ危機でまたまた下げ率ナンバー1

 ショックに弱い日本株。いわゆるギリシャ・ショックは、2008年のリーマン・ショックほどではないが、またしても日本の株価に対して大きな影響をもたらした。

 「日本経済新聞」(5月29日夕刊)の記事によると、このショックの影響を大きく被った時期である、4月末の終値と5月28日の比較に於いて、ニューヨークダウは7.9%の下落、英国株は6.6%であったのに対して、日本の株価は11.7%も下落した(日経平均ベース)。

 リーマン・ショックは、日本の金融システムが健全なので、大した影響はない(当時の与謝野馨経財相は「ハチに刺された程度のものだ」と仰った)という見立てに反し、その後の推移を見ると、耐久消費税の輸出に大きく依存する日本経済に、サブプライム問題の震源地である米国よりも深刻な経済後退をもたらした(スズメバチ並のショックをもたらした)。

 今回の欧州の一連の問題によって、再びそのような状況に陥る可能性はないのだろうか。

 この点に関しては、日本の輸出に占める欧州の比率が全体のざっと一割くらいと大きくないことから、直接的な影響は小さいだろうというのが大方の見方のようだ。

 欧州向けが特に大きな企業については影響があるだろうが、中国をはじめとするアジアと米国の経済に大きな減速がなければ、回復トレンドを何とか維持するだろう。

 5月21日付けの日本銀行の「当面の金融政策運営について」の文章を引くと、「わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。すなわち、新興国経済の回復などを背景に輸出や生産は増加を続けている」との現状認識であり、欧州の問題は、新興国経済の上ブレに対する、下ブレのリスク要因として一応挙げてあるにすぎない。

 それならば、なぜ、日本の株価が他の先進国の株価よりも大きく下げたのだろうか。

 先ず、何といっても、日本株の取引状況が、外国人の売買の影響を大きく受けやすいことだ。

 昨年の東京証券取引所の第一部の委託売買の売買代金はざっと235兆5千億円あるが(売りと買いの平均を概算)、このうち外国人によるものが126兆9千億円あり、半分を超えている。ちなみに、個人投資家は66兆2千億円と外国人の約半分に過ぎない。

 しかも、個人の売買には一日のうちに反対売買を行うようなデイ・トレーダー的な取引も含まれているので、ファンドのポートフォリオ調整を背景に、買いなら買い、売りなら売りの一方向で入って来やすい外国人の取引が毎日の株価の動向をあらかた決めている。

 米国なりヨーロッパなりで株価が大きく下げた場合、グローバルな資金運用を行うファンドはファンドは、バランス上日本株も売ることになるので、現在のような売買状況では、西の天気が東に流れるような具合に、海外の株価の動きが、日本の株価の動きを決めることになる。

 この構造は当面仕方がないとしても、それなら、海外並の株価の下げでいいのではないか、と言いたくなる向きがあるだろう。

 日本株の下げが大きかった第二の理由は円高だ。

 海外の株価と日本の株価の動きを大まかに較べると、円高が進んでいるときに、日本株が割り負けする関係が明白だ。

 円高は、もちろん輸出企業の利益に大きくネガティブに影響するし、日本人の相対賃金が高くなるということだから、競争力全体に影響する。今回、対ユーロだけでなく、対米ドルでも円高が進んだことが、日本株の相対パフォーマンスの悪化を招いた。

 ところで、一部には「ギリシャは対岸の火事ではなく、次は日本の財政が問題だ」という声があり、ユーロに対する円高は分かるとしても、米ドルに対して円高になることについては、釈然としない人もいるだろう。

 しかし、日本の財政が問題であるなら、真っ先に上昇すべき長期国債の利回りも安定的に推移したばかりか、この間むしろ低下した。

 長期国債はもちろん、日本の通貨である円も大半は国債を背景に発行されているのだから、日本政府の債務だ。少なくとも、この間の市場の動きから見る限り、日本政府の債務への国際的な信認は厚いのが現実だ。

 あくまでも相対的な比較によるものだから、それで日本政府及び財政に問題なし、というわけではないが、今回の市場の動きを見ると、日本円建ての資産の安全性が不安だからといって、海外資産に向けて資産の大半を動かすのは、必ずしも賢明ではないかも知れない、ということに気付くべきだ。

 世間では、日本の財政への危機感を煽って、プライベート・バンク、金の現物投資、海外への資産逃避のサービスなど、たっぷりと手数料の掛かる商売をもくろむ向きがあるが、簡単に引っ掛かってはいけない。

一番のリスクは常識を越えた現政権の政策

 さて、立ち直りかけては、たびたび上昇が頓挫する日本株だが、どう見るべきなのだろうか。

 先ず、利益と株価の関係を見ると、企業業績の回復と今般の株価の下落で、今期予想ベースのER(株価収益率)は東証一部で17.31倍だ。これを益利回りに直すと、5.77%ある。

 今年、来年の名目GDP成長率をざっと年率2%と見積もって、益利回りに足すと、7.77%となり、長期国債利回り1.25%を6.5%程度上回ることになる(株価、金利は何れも5月28日のもの。予想利益は日本経済新聞)。

 株価のレベルとしては、割安なゾーンに入っている。PBR(株価純資産倍率)の1.1倍、配当利回り(東証一部、予想利益、加重ベース)の2.01%も「割安」と言えるレベルだ。

 為替レートの先行きを見極めることは、いつでも簡単ではないが、米国経済が欧州問題で大きく減速しないなら、少なくとも急激な円高は考えにくい。毎度のことながら頼りない日本株だが、現状はまずまずの「買い場」なのではないだろうか。

 それにしても、今回の「ショック」に対する市場の反応を見る限り、日本がデフレ脱却に向けて、もっと有効な金融緩和を行うと、為替レートは円安に向かうだろうし、株価も上昇するだろう。

 しかも、金融緩和にいわゆる「信用緩和」のような財政的な側面が加わったとしても、日本の資産に対する信認は厚いのだ。海外任せ以外にも打つ手があることを知っておきたい。

 投資の文脈で考えると、現状は日本の政策が不十分な状況で形成されている株価だ。日本の経済政策に対する期待は高くないから、ダメでもともと、少しでも改善されればプラスのサプライズという状況である。

 常識的には「買い」だろう。しかし、たとえば現政権の場合、常識を超える経済政策の失敗がないとも限らない。リスクが常にあることを忘れずに、お金の運用については、読者ご自身で納得が行くようにご判断いただきたい。

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