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岩崎夏海が「ドラッカーの聖地」で明かした『もしドラ』秘話

大ベストセラー著者に「ドラッカー自伝」翻訳者・牧野洋が聞いた [前編]
牧野 洋 プロフィール

牧野 ドラッカーゆかりの地クレアモント、松井選手が活躍するエンゼルスの本拠地アナハイム、「エンターテインメントの世界首都」ハリウッド――。すべて南カリフォルニア・ロサンゼルスの周辺にあり、1時間以内で行き来できます。運命的なものを感じられるのでは。

岩崎 アップル創業者のスティーブ・ジョブズが何年か前に、スタンフォード大学の卒業式で行った名スピーチを思い出します。そこでジョブズが言った「コネクティング・ザ・ドッツ(点をつなげる)」という言葉が好きです。

 ジョブズは大学を中退していますが、「中退したからこそ学べた事があり、それが後になって非常に役立った」と語っています。つまり、その時点ではなんだか分からないけれども、後から振り返るとすべての点がちゃんとつながっているというのです。

 後を振り返ってしか点をつなげられないけれども、すべての点は将来何らかの形でつながっていくと信じなければいけない、というわけです。今回アメリカに来て、ドラッカー、松井選手、ハリウッドという3点が南カリフォルニアでつながっていることを発見しました。まさに「コネクティング・ザ・ドッツ」です。

 さらに付け加えれば、『もしドラ』を出版したのが2009年12月。同年11月は、折しもドラッカー生誕100周年でした。生誕100周年はまったく意識していなかったのに、偶然にも重なりました。

ドラッカーと野球を結びつけたのは正しかった

牧野 その延長線上で言えば、ドラッカーと野球の関係も「コネクティング・ザ・ドッツ」ですね。

岩崎 そうなんです。実はドラッカーと野球には深い関係があるのです。

 ドラッカーは大の野球ファン。ロサンゼルスへ本拠地を移す前のニューヨーク・ブルックリン時代から、一貫してドジャーズを応援していました。ドリスさんから聞いたのですが、子供にわざわざ学校を休ませて、家族連れで試合を見に行っていたそうです。

 ぼくとの面会中、ドリスさんは「ピーターが野球のユニフォームを着ている写真がある」と言って、探しに行ってくれました。残念ながら見つかりませんでしたが、面白い話を聞かせてくれました。

 ドラッカー一家がニューヨーク近郊のニュージャージーに住んでいた時のことです。ニューヨーク・ヤンキーズの監督も務めたヨギ・ベラが近所に住んでいて、ドラッカーと親しかったそうです。だれかから「なんでこんな田舎町に住んでいるんだ?」と聞かれると、ヨギ・ベラは「世界的な有名人が2人住んでいる。おれとドラッカーだ」と答えたそうです。

 ドラッカーの野球好きを知ったのは、昨年暮れに日本のドラッカー学会の総会に顔を出し、ドラッカースクールのジャクソン学長のスピーチを聞いた時です。学長は「岩崎さんの本はとてもドラッカー的。なぜなら、ドラッカーは大の野球好きだから」と言ったのです。とてもうれしかったです。

 ドラッカーの野球好きを知らないで『もしドラ』を書いたのですが、ドラッカーと野球を結び付けたのは正しかったわけです(笑)。

ドラッカーは週刊誌の原稿料で生活費を稼いでいた

牧野 クレアモント大学院大学のハフ総長とのお茶会も野球の話題で盛り上がりました。岩崎さんは松井選手の額入り写真をプレゼントにもらいましたからね。

岩崎 口ひげをたくわえたハフ総長とのお茶会は楽しかったです。総長には古き良き時代の典型的アメリカ人という雰囲気がありました。大好きなノーマン・ロックウェルが描いた絵に出てきそうな風貌と話し方でした。アメリカの良心というか故郷というか・・・。「アメリカに来たんだなあ」と改めて感じました。