霞が関が笑う 子ども総理に子ども大臣、
そしてポチ記者たち

< 鳩山政権、これが真実 >
長谷川幸洋×高橋洋一 

 東京新聞論説委員・長谷川幸洋氏の新著官邸敗北(講談社刊)が話題だ。前々作官僚との死闘七〇〇日で、自らが"首相ブレーン"として関わった安倍晋三政権の内幕を描き、前作日本国の正体では自身の体験を元に官僚による政治家・メディア操作の実態を赤裸々に綴って山本七平賞を受賞した。

 そして新著では、国民の大きな期待を受けて政権交代を成し遂げた鳩山内閣が、なぜこれほどまで早く失墜したのかを、政官の駆け引き・攻防を軸にドキュメントとして記している。 

 その長谷川氏が、安倍政権下での"盟友"で、財務省の異端児として知られた嘉悦大教授・高橋洋一氏とともに、鳩山官邸失敗の要因と末期症状について語り合った。 


長谷川 先日、財務省の某幹部官僚と食事をした際に、ポスト鳩山由紀夫首相について率直に聞いてみたんです。「財務省としては、菅直人総理大臣---仙谷由人官房長官なら、文句はないんでしょ?」と。 

高橋 財務省批判の急先鋒である長谷川さんと食事をするなんて、なかなか大胆な幹部だね。財務省お得意の懐柔作戦じゃないの? 

長谷川 役人が記者をポチにする手口は知り尽くしているから、ご心配なく。 

高橋 それで、その幹部の答えは? 

長谷川 一言、「OKです」。 

高橋 なるほど、菅副総理兼財務相と仙谷国家戦略相は、すでに財務省に取り込まれていることが、これではっきりわかる。最近の二人の言動は明らかな増税路線。財務省による洗脳は見事に完了しているということですね。

長谷川 鳩山政権は「脱官僚依存」「政治主導」を掲げて誕生したんですが、実際には予算編成のタイムスケジュールを組んだのも事業仕分けを裏で仕切ったのも、高橋さんの古巣の財務省だった。「脱官僚」と言いながら、オール霞が関を敵に回すと政権運営ができないという現実的な計算もあって当初は財務省と手を組んだわけですが・・・。 

高橋 財務省は、天下り根絶を叫ぶ民主党を手強いと思っていたはずです。だから政権発足直後は従順だった。

 従来は財務省といえども切り込めなかった各省庁の特別会計に、新政権が手をつける方針を示していたこともあって、むしろ積極的に協力もしていた。

 ところが、政権ができて40日も経たないうちに、「おや、この政権は御しやすいぞ」と思い直したんです。 

長谷川 亀井静香郵政担当相が、斎藤次郎元大蔵事務次官を日本郵政社長に起用した一件ですね。明白な天下りで、なおかつ渡りの典型のような人事を、大臣主導で行った。

 しかも鳩山首相は、この人事が自分にとって寝耳に水だったことをメディアに認めたうえで、「能力のある人だから」という理由で追認した。つまり、大臣の任命であれば天下り問題をクリアできるわけで、官僚にしてみればこれで事実上、天下りはやりたい放題になりました。 

高橋 ついでに言えば、日本郵政の副社長に就任した坂篤郎、足立盛二郎の両氏も官僚OB。どこが脱官僚依存なんだか。 

イチコロだった菅財務相 

長谷川 いや、それだけじゃない。日本損害保険協会副会長だった坂氏の後任に牧野治郎元国税庁長官を押し込んだ。財務省はこの人事を官邸に知らせず勝手に決めたため、松井孝治官房副長官が激怒したと聞いています。財務省は斎藤人事で政権の力量を完全に見切って図に乗ったんですね。 

 そして、評判のよかった事業仕分け第1弾でさらに調子に乗ってしまう。

 蓮舫議員などの威勢の良さは、財務省が裏で取り仕切っているからだとメディアが気づき、次第に政治家よりも財務官僚に取材をするようになった。その結果、何人かの主計官がテレビカメラの前で満面に笑みをたたえながら「無駄が洗い出されてよかった」なんて話しちゃったものだから・・・。 

高橋 「我こそが主役」の政治家たちは脇役が目立つのは許せない、と(笑)。 

長谷川 そう。仕分けに関わったある民主党議員が、「お前ら、テレビのインタビューなんかに答えやがって」と財務官僚を怒鳴りつけたそうです。また、事業仕分け成功の立て役者だった主計官出身の宮内豊行政刷新会議事務局次長は、完全に干されて邪魔者扱いになった。 

高橋 役人に侮られていることに気づいた政権が反撃に出たわけですね。すると今度は、財務省も黙っていない。ということで、ある財務官僚が長谷川さんに怒りの電話をかけてきた。いわば、密告(笑)。 

長谷川 ええ(笑)、去年の12月25日。クリスマスだというのに会いたいと言うから何事かと思ったら、「官邸はすごいことになってますよ」とまくし立てるんです。「成長戦略がないという批判に答えるため、成長戦略策定会議を取材させることになったんですが、テレビカメラが入る前に菅国家戦略相(当時)や政務三役、首相補佐官たちが参加してリハーサルまでやっているんですよ」と。 

高橋 会議が政治主導に見えるよう、アングルまで気にしたわけですね。いかにも菅さんらしい。 

長谷川 こんなみっともない舞台裏をわざわざバラすのは政権の悪口を言ったも同然。さらに新成長戦略の基本方針が発表される12月30日朝にも、「今日発表になる成長戦略はひどい内容です」と電話がかかってきた。ああ、財務省は鳩山内閣に距離を置き始めているんだな、この分だと反乱が起こるぞと思っていたら、本当に起こった。 

高橋 菅さんの立ち往生事件ね。 

長谷川 そう。1月の予算委員会で、藤井裕久財務相の辞任を受けて財務相に横滑りした菅さんが、自民党の林芳正議員から子ども手当の「乗数効果」と「消費性向」について質され、何度も答弁に窮してしまった。 

高橋 「官僚に教えてもらえ!」と野次られていたね。 

長谷川 質問は、遅くとも当日の朝までにわかっているから、財務省は事前に答弁メモをいくらでも用意できたはずなのに、サボタージュしたんですね。これこそ、役人が政治家を困らせるイロハのイ。 

高橋 「乗数効果」は財政支出の景気刺激効果、「消費性向」は可処分所得のうち消費に回す割合のことで、過去10年の国会で100回以上質疑があった超初級編の質問です。ただね、あの立ち往生の責任は菅さんにもある。

 財務相就任当初は、官邸の副総理室に陣取ったまま、財務省にあまり顔を出そうとしなかった。たぶん、どんな質問が出ているのか、見てもいなかったんじゃないかな。「脱官僚」を意識したのかもしれないけど、かえって恥をかく結果になりました。 

長谷川 その後の菅さんはすっかり懲りて、答弁は官僚メモの棒読み。財務省と二人三脚で増税路線一直線です。 

高橋 次の総理というニンジンもぶら下がっているから、霞が関の横綱・財務省を敵に回したくないしね。 

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