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放射能で「汚れた土」がこれからしでかすこと
汚染地域800平方km以上、
元に戻すには100年以上かかる

山菜やキノコに多量に蓄積

「飯舘牛というA4、A5の高級牛ブランドがあるから、ここでは畜産しかやっていないと勘違いしている人が多いけれど、ほとんどの農家は完全複合経営なんだ。だから俺たちには畜産と同時に、田んぼや畑もやってきたという自負がある。それもすべてここの土のおかげだったんだな。今は畜産にしろ米にしろ、落ちるところまで落ちたイメージに苦しんでいる。ここは『日本一美しい村』という称号があったけど、原発のせいで日本一汚い村と言われるようになってしまったんだ」(福島県相馬郡飯舘村で農業を営む60代男性)

 福島第一原発から漏れ出た放射性物質によって、広範囲の土壌が汚染されている。兼業も含めれば人口の約7割が農業に従事している飯舘村のように、汚染地域の大部分を占める福島県浜通りは、稲作や畑作、牧畜が盛んな土地だ。それだけ土との関係が深いところなのである。

 新潟大学農学部土壌学研究室の野中昌法氏が言う。

「あの地域の土はもともとそんなに肥沃なわけではない。人々が長い時間をかけながら、家畜を飼い、その糞や里山の落ち葉などをかき集めて堆肥にして、必死に土地を改良したうえで、農業を営んできたんです」

 苦労して肥沃な水田や畑、牧草地を手に入れた人々にとっては、土そのものが仕事の場であり、生活の糧だ。

 それがいまや汚された。放射能で「汚れた土」が、これからしでかすことは何なのか。

 言うまでもなく、第一に挙げられるのは、甚大な健康被害を住民に与えることである。放射線防護学が専門の日本大学専任講師・野口邦和氏がその危険性について解説する。

「土に触れる農作業などによって放射性物質が体内に入ります。また野菜類、とりわけ地表に根を張る山菜やキノコには、土に含まれる放射性物質が多量に蓄積され、それを食べることで被曝してしまう。

 土を汚染している放射性物質のひとつ、ヨウ素は8日経つと線量が半分に減って1ヵ月でほぼなくなります。だから今後問題なのは、半減期が約30年と長いセシウムです。体内に入ると70日ぐらいで半分に減って尿とともに排出されますが、多量に摂ると、骨と脂肪以外の全身に均等に行き渡ります。そのため全身が被曝することになり、甲状腺がんのみならず、あちこちにがんができるようになってしまいます」

 ヨウ素やセシウム以外に、ストロンチウムという放射性物質も、先月、第一原発から30km圏外の土壌から検出された。野口氏が続ける。