「米中戦略経済対話」に政府要人200人を
送り込んだアメリカの思惑

普天間で揺れる日米関係をよそに蜜月関係

 まるでホワイトハウスが、ワシントンから北京にごそっと引っ越してきたかのような賑やかな二日間だった。

 5月24日、25日の両日、北京で「第2回米中戦略経済対話」が開かれ、ガイトナー財務長官、クリントン国務長官ら8人の大臣級を含む総勢200人のアメリカ政府要人が訪中した。

 「米中双方が関心を持つあらゆることについて2国間で話し合う」という触れ込みで、いまや「G8」(主要先進国サミット)と「G20」(主要国サミット)に次ぐ「G2」(米中サミット)と言われている重要会議だ。

 今回も、貿易不均衡、人民元の為替レート、IMF改革、ヨーロッパ経済危機、新型エネルギー、食品安全、北朝鮮・・・いま二国間及び世界で取り沙汰される諸問題を、片っ端から俎上に載せていった。

 今回の二日間の会議を総括した楊潔外相は、「キーワードは『坦誠』と『深入』だった」と述懐したが、北京で見ていて、まさにそのような心象を持った。「坦誠」とは、「率直で誠実」という意味で、「深入」は文字通り、「深く入っていく」という意味だ。つまり、米中は胸襟を開き合い、互いに互いの懐に深く入っていったということだ。

 なぜそこまで米中が、「坦誠かつ深入」になったかと言えば、オバマ政権の「中国観」が、大方固まってきたからだ。

 過去10年のアメリカ政府の「中国観」を、簡単に振り返ってみよう。2001年にブッシュ政権が発足した時、アメリカにとって中国は、「警戒すべき準敵対国」だった。ボブ・ウッドワード記者の一連の著作には、ブッシュ大統領が、ある意味で北朝鮮・イラク・イランという「悪の枢軸」以上に、中国を警戒していた様が描かれている。

 それから5年経った2006年秋、当時、対中国問題の責任者だったゼーリック国務副長官が、「アメリカにとって中国は、Stakeholderである」と宣言し、ブッシュ政権は「中国観」を変えた。Stakeholderとは、「同じ利益を共有する者」という経済用語で、「中国は政治的には対立するけれども経済的利益は共有している」と認識したわけだ。

 ここから米中関係の「氷解」が始まった。

 昨年発足したオバマ政権は、さらに踏み込んで、9月にスタンバーグ国務副長官が、「今後の米中両国は、Strategic Reassurance(戦略的確約保証)の関係になるべきだ」と発言した。この意味するところは、2ヵ月後の11月にオバマ大統領が訪中して、自ら明らかにした。

 すなわち、「アメリカは、中国が発展し、アジア域内の超大国となることを認める。中国はその際、アメリカの利権を侵さないことを確約する。このように米中両大国は、敵でも味方でもなく、互いに戦略的に確約保証しあう関係である」というのが、オバマ政権の「中国観」なのである。

 オバマ政権は、このような「中国観」を確定させるや、中国に対して遠慮がなくなった。中国もアメリカに対して同様である。今年に入って米中関係が急激に悪化したのは事実だが、それは夫婦が結婚して遠慮がなくなったようなものだと、私は認識している。

 今回の米中戦略経済対話でも、米中は実に、忌憚のない意見を出し合った。「10年以内に財政赤字を1兆ドル減らしたいので全面的に協力してほしい」と、ガイトナー財務長官が頼めば、「わが国は中小企業が脆弱なので力を貸してほしい」と、王岐山副首相も頼んだ。

 また中国は、前回の第1回米中戦略経済対話(昨年7月)でアメリカ側が強く要求していた、アメリカ企業が中国に投資する際の認可の審査時間の短縮と透明性を確約した。アメリカ産の大豆を中国に輸出する際の検疫の方法についても、侃々諤々の議論がなされ、次の第3回対話で結論を出すことになった。

 保険と金融の分野では、さらに協力を深めていくこととし、細目を詰めた。

 こうした一連の協議をつぶさに追っていると、アメリカのホンネが透けて見えてくる。それは、「中国を利用して金儲けがしたい!」という一語に尽きる。

200年以上続くアメリカの中国観

 実はこれは、200年以上続くアメリカ人の伝統的な考え方とも言えるものだ。中国のアメリカ研究者の間で必読書である『中米関係史』という分厚い全3巻本がある。その上巻の冒頭には、両国の「馴れ初め」が書かれている。

< イギリスとの独立戦争が終結した翌年の1784年2月、アメリカの商船「チャイニーズ・クィーン号」がニューヨーク港を出港し、大西洋、インド洋経由で、2万1000㎞もの航海を経て、半年後に広州港に辿り着いた。

 そして広州で中国の茶やシルク、陶器などを満載して、翌年5月にニューヨーク港に帰港し、彼らは一夜にして巨万の富を築いた。この成功を機に、アメリカ人は我も我もと、中国を目指すようになった・・・ >

 200年以上も前から、アメリカ人はそのDNAを変えていないということだ。

 それにしても、日本が普天間基地問題で、鳩山政権が吹っ飛びかねないほどの事態に陥っているというのに、同盟国のアメリカは、200人もの政府首脳を隣国の中国に送り込んで、「金儲け論議」に耽っていたのだ。日米同盟って、一体何なのだろう?

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら