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 5月18日、政府は11年度の一般職国家公務員の新規採用を半減する閣議決定を見送った。14日に続いて、2度目の見送り。09年度の新規採用9112人をベースに半減という方針を決めるはずだったが、閣僚=省庁から異論が出て、断念せざるを得なかったのだ。

 総務省が策定した削減案では、キャリアと呼ばれるⅠ種と本省Ⅱ種の新規採用は合わせて2割カット、地方出先機関や高卒で受験できる本省Ⅲ種は8割カット、国税専門官や刑務官など専門職種は5割カットが目標になっている。

 「天下りあっせんの全面禁止」により退職者数が頭打ちになるため、新規採用を大幅抑制することで人件費の伸びを抑えるのが狙いだ。

 これに対し、所管大臣の原口一博総務相は、本省Ⅰ種は例年並みの採用数を維持する方針を示している。2割カット分はⅡ種だけでまかなうことになるから、明らかなキャリア厚遇だ。

 一方でⅢ種を8割カットすると、その分、地方公務員の採用が激戦になる。いずれにしても、一部の採用試験がすでに始まっている時期に、泥縄式で決める話ではあるまい。就活中の学生が気の毒だ。

 実は今の政府に国家公務員の総人数や採用数を専門に考える組織はない。各省庁が独自の判断で採用し、天下りなどで間引くことによるあうんの呼吸で、総人数を一定程度に保っているのが実態だ。

 当然ながら政府に"人事部"がないのは問題であるとして、福田政権の時に国家公務員制度改革基本法ができた。渡辺喜美行革相が原案を作り、与野党合意のもとで成立した法律だ。

 だが、この法律には大きな欠陥がある。渡辺行革相の原案には、国家公務員の一括採用を行う内閣人事庁の設置が盛り込まれていたが、民主党(当時野党)の松井孝治参議院議員(現内閣官房副長官)が、「各省ごとの採用にしないと、公務員の士気が低下する」と、官僚そのものの発言をして、最終的に与野党合意案では一括採用は削除された。

 一括採用条項が残っていれば、閣議決定の見送りなどというみっともないことは起こらなかったに違いない。松井氏は今、公務員問題に関する政府の責任者。さぞかし自分の見込みの悪さを後悔しているだろう。

 それ以上に深刻な問題は、民主党の労働組合依存である。総選挙のマニフェストで民主党は国家公務員の総人件費2割カットを公約した。従来のように、民営化や独法化で政府をスリムにしなければ、公約実現は無理。

 だが、郵政民営化の逆戻りでわかるように、労組頼みの民主党は正反対の方向を向いている。また、公務員の給与体系は、昔ながらの年功序列。年齢さえ重ねれば高給取りになる仕組みだ。この賃金体系を改めなければ、給与水準のカットもできない。

 そこで、新規採用者にしわ寄せがきたのだ。彼らはまだ組合員ではないから、採用を減らしても労組は文句を言わない。

 今の公務員は身分制で既得権だらけの社会だ。世間の人事ランクに当てはめれば、各省庁の事務次官や局長は社長、専務クラスの実力者だ。しかし、公務員制度の下では、か弱い「労働者扱い」なのである。既得権者を甘やかし、新規採用者に冷酷な仕打ちをする制度は、どこかおかしい。

 そんな中、霞が関で公務員制度改革に奮闘してきた原英史氏(元渡辺行革相補佐官)が『官僚のレトリック』(新潮社)を上梓した。公務員がどれほどずる賢く、一筋縄でいかない存在であるかが、よくわかる。


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