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デフレ敗戦 日本経済「二番底」に死す
2010年全国民必読 「1億総貧乏」時代が始まる
『マネー敗戦』(吉川元忠著)は、米国に翻弄された結果、平成不況に至った日本の姿を描き、ベストセラーとなった。あれから10年。いま日本を「次なる敗戦」に陥れようとするものの正体は、デフレに他ならない。

“投げ売り”型デフレ

「いま日本全国を襲っているデフレの実態は、企業の“投げ売り”です。物価下落の理由に、規制緩和による量販店の進出や、流通の効率化を挙げる人がいますが、現在のデフレはそんなことでは説明できません。企業の生産性が上がっているわけでもない。今回のデフレの根本原因は、40兆円もの規模に膨れ上がった需給ギャップにある。景気が悪化し続ける中、企業が“投げ売り”に走っている悪性のデフレ状態なのです」

 そう語るのは、慶應義塾大学経済学部教授の竹森俊平氏だ。二番底懸念が忍び寄る経済情勢下で、企業は需要の掘り起こしに躍起になっている。これが自らの首を絞める結果になることは後述するとして、まずは“投げ売り”のすさまじい実態を列挙しよう。

 '09年、安売りの象徴となったジーンズ業界では、ついに0円ジーンズが登場した。『ジーンズメイト』が、10月に大阪や広島で新規ショップをオープンしたのにあわせ、リーバイス、エドウインのブランドジーンズを無料配布。アメリカのカジュアルブランド『GAP』は、11月に原宿店をオープンした際、ジーンズ1000本を無料で配った。

 外食産業の価格破壊も度を越えている。サラリーマンのメッカ・新橋では、ビル一棟借りの居酒屋『新橋応援団 ワタル』が180円でサントリーモルツを飲ませている。かと思えば、五反田の居酒屋『ぼたん』は生ビールを50円で提供中だ。居酒屋以外でも、銀座の中心地に店舗を構える和菓子屋『播磨屋(はりまや)』が始めた『フリーカフェ』では、ドリンクとおかきがタダで振る舞われる。店内には主婦たちが押し寄せ、活況を呈している。無料のコーヒーを飲んでいた、中小企業の社長夫人に聞いた。

「うちの会社も厳しいから、タダって聞いたら、『じゃあ遠慮なく』ということ。銀座三越から取引先へのお歳暮は贈っても、小銭は無駄にしたくないんです」

 年末年始の旅行予約が、国内で前年同期比1割減、海外も2~3割減と寒風吹き荒れる旅行業界では、109円という激安旅行プランが登場。インターネットサイト「トクー! トラベル」には、1泊2日で通常8150円の温泉宿が、2食付きで109円というプランまであるのだ。

 日本綜合地所など大型倒産が続いた不動産業界もデフレの波に呑み込まれつつある。'09年10月から1000万円(施工面積約90m2)を切る戸建て住宅をネット販売し始めた『エス・バイ・エル』(大阪府)の開発部部長・藤本和典氏は、値下げの理由をこう語る。

「'08年秋のリーマンショック後、2000万円以上の住宅が急激に売れなくなりました。その後も住宅価格が下落を続ける中、『1000万円を切らないとインパクトがない』ということになり、販売を決定した。収入が安定していないなどの理由で、銀行から融資が受けられないお客様からの注文が増えています」

 700万円台(工事面積約75m2)の戸建て住宅をネット販売するメーカーも出現した。『アイフルホームFC本部』の広報・宣伝室主任・山口健二氏が、安値の秘密を明かす。

「対面販売による営業コストがかからない上、モデルハウスを建築しなくてもいい。施工面でも、独自の工程・施工管理で作業を合理化し、工期も短縮して、コストダウンしています」

 未婚者が増え、客の獲得競争が激化しているブライダル業界では、破格値のプランが人気だ。『ティーブライド』(愛知県)が運営する式場では、衣装代、美容代、写真代まで込みで、たったの4万8000円。

「名古屋の式場は、月に50~60組の式をあげて大盛況です。式の時間は30分ほどで、通常と同じやり方。もちろん讃美歌も歌います。業績は右肩上がりです」(同社広報担当者)

左から無料ジーンズのチラシ、おかきとドリンクが無料のカフェ、180円ビール居酒屋
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