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「会いたい」DNA鑑定での身元照合にかける思い
福島県内でいまだ203遺体が身元不明。
体細胞を提出して愛する人を探す家族に密着した
遺体の指紋も採取しているため、会場では、不明者の指紋が残されている可能性のある物も受け付けていた[PHOTO]蓮尾真司(以下同)

「母親を探して、いわき市内にある遺体が安置されているところはすべて回りました。私の家は海のすぐ近くにあったんですが、全部流されてしまって・・・。家の瓦礫が残っていた場所で、もしかしたら下にいるかもしれないと思って、自衛隊に捜してもらいましたが、見つかりませんでした。家のあったところにはもう風呂しか残っていません。だから、母のDNAが取れるようなものは何もないんです」

 5月16日、志賀伸幸さん(49)は、市内の平体育館を息子の一喜さん(22)とともに訪れた。同じ避難所で暮らす会社の同僚から「身元不明の遺体をDNA鑑定で照合している」と聞いたからだ。志賀さんの自宅のあったいわき市平薄磯地区では、約100人が津波の犠牲となった。志賀さんの母親(77)を含む12人がいまだに行方不明のままだ。

 福島、宮城、岩手の3県警は、5月13~22日、避難所や警察署で行方不明者のいる家族からのDNAの提供を受け付けている。3県の行方不明者は約9000人で、身元が判明していない遺体は約2300体ある。うち福島県では203遺体が身元不明のままだ(17日現在)。そこで、本人が使用していた電気髭剃りに残っている皮膚片や歯ブラシに付着している口腔内細胞からDNAを採取し、照合して身元の特定を進めているのだ。

 15日までの3日間で、福島県で100件、宮城県で405件、岩手県で258件のDNA鑑定依頼があった。会場を訪れる家族の手には、家中からかき集めてきたと思しき品々が握り締められていた。

「最初から本人が使っていた歯ブラシなどを持ってきてくれる人もいますが、『とにかく駆けつけました』という感じで来られる方がほとんどです。皆さんとにかく家族を見つけたい一心なんです。気づきにくいのですが、枕カバーや腕時計、メガネなど、実は鑑定の資料になる物はけっこうありますので、いらっしゃる方には手がかりになる物を説明しています。

 それを聞いて、車の灰皿の中に残っていたタバコの吸い殻を持ってきてくださった人もいました。DNAだけでなく、歯型や指紋が残っている物の提供も呼びかけています」(福島県警科学捜査研究所の職員)