非公開「原口メモ」が明かす
郵貯マネーの「ジャパンファンド化」

海外ファンドとの協調や外国債へのシフトを提言

 私の手元に『郵貯・簡保の資金運用改革』と題されたA4版12頁のメモがある。この非公開メモは、4月30日に閣議決定、5月18日に国会審議入りした郵政改革法案に関連し、原口一博総務相が事務当局に指示・作成した郵貯・簡保資金の新たな運用策を示すものだ。関係者の間で「原口構想」と呼ばれている。

 同メモにある郵貯・簡保資金の「運用対象(ポートフォリオ)改革の視点」には、次のような提言がある。

「< 成長点 >への投資・融資」として、

(1)海外ファンドとの協調等による投資・融資―政府間協定等の下で信用力の高いものへの資産運用―例えばインフラ整備への投資・融資(インフラファンド経由等)やベンチャー企業への投資・融資(ベンチャーファンド経由等)、

(2)官民連携による事業への投資・融資―例えばPFI(民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供を委ねる)、PPP(公共サービスの民間開放)による社会資本整備(橋、病院、学校など公共施設等の整備)、

(3)今後成長が期待される分野への投資・融資―例えば医療・介護(ヘルスケア)、環境、情報通信等、などが挙げられている。 

 従来は郵貯約80%、簡保約70%が国債中心の運用だった。このメモでは郵政民営化後も、官から民への資金の流れの変化は進んでいないとし、国債購入についても「安定性、運用利回り等を重視した外国債」へのシフトに言及している。

 こうした新たな投資・融資策の前提となるのが、先に鳩山由紀夫政権内で物議をかもした郵貯と簡保の預け入れ限度額の引き上げである。

 亀井静香郵政・金融担当相と原口総務相が主導した、ゆうちょ銀行への預入限度額の現行1000万円から2000万円、かんぽ生命保険の加入限度額1300万円から2500万円への引き上げ案は3月30日の臨時閣議で正式決定した。08年度ベースで郵貯資金は178兆円、簡保資金が104兆円に達している。

 「原口構想」は、こうした巨額資金の中から約10兆円規模を、海外を含む成長分野へ投融資するというものなのだ。原口氏は朝日新聞のインタビュー(4月27日付朝刊)の中で、インフラ整備などで海外進出する日本企業を国家戦略的に支援することを念頭に、以下のように語っている。

「私たちは戦略的にお手伝いするだけだ。直接投資の体制は整っていないので、政府間協定の下で信用力の高いものを他のファンドを経由して投資する。あくまで民間の経営判断によるもので、『国家ファンド』のようなものではない」 

 原口氏が言わんとすることは、当面、例えばシンガポール政府投資公社(GIC)そのものを目指すのではなく、郵貯マネーの運用先としてGICなど海外の有力ファンドを考えているということである。

 だが、いずれはGICやオランダのポストバンクを09年1月に吸収・統合したINGグループをモデルにした"ジャパン・ファンド"を創設したいというのが本音ではないか。

仙谷国家戦略相「構想」との微妙な関係

 そこで関心を集めるのは、既に前回コラム(仙石・前原のベトナム「官民一体セールス・ツアー」への期待)で紹介した仙谷由人国家戦略相が主導する「国家戦略プロジェクト委員会」構想との関係である。官民挙げた協力体制で国際インフラ商戦に臨む同委員会は国際協力銀行(JBIC)などからの協調融資を前提としたものである。

 ところが、この「原口構想」の目指すのは巨額な郵貯マネーを海外ファンドとの協調による投融資であり、そして将来的には自ら"ジャパン・ファンド"として運用に当たるというものだ。

 両構想の間にバッティングの心配はないのか。

 ましてや民主党内のパワーバランスを見ると、仙谷氏と原口氏の現在の立ち位置はそれぞれ「反小沢」と「親小沢」であり、相反する。

 だが「ポスト参院選」政局を考えると、こうした政治スタンスの違いを克服して"オールジャパン"体制で現下の閉塞的経済情勢を打破できるのかどうかが、まさに問われているのだ。

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