危機管理失敗が露呈してもG8で大はしゃぎ
それでも海外追放にならない日本の民主主義に、菅首相は感謝したらいかが

福島第一原発〔PHOTO〕gettyimages

 震災から2ヵ月以上経った今、菅内閣がいかに危機管理に失敗してきたかを示す証拠が次々と出てきている。とくに原発事故については、あきれるばかりである。

 震災の日に、福島第一原発が津波に襲われる様子を撮影した写真が公表されたのは、先週のことである。また、震災の翌日、3月12日に海水の注入が首相の指示で55分間中断されたという。

 菅首相は、原子力安全委員会の班目委員長に「海水を注入した場合、再臨界の危険性はないか」と質問したところ、「あり得る」との返事だったので、この措置をとったという。しかし、その後、原子力安全委員会から、「再臨界の心配はない」という報告が来たので、海水注入が再開された。この間55分間中断である。これが、事態を悪化させた可能性が高いのである。

 ところが、この件が報道されると、班目委員長は、「再臨界があり得る」などと言ったことはないと否定した。一体どうなっているのか。菅首相が、福島第一原発をヘリコプターで視察したときも、班目委員長が同行している。

西岡参議院議長の指摘は正論

 内閣参与の松本、小佐田、平田氏も発言内容が問題にされたり、辞任したり、全く話にならない醜態が続いている。不用意な発言をするアドバイザーたちにも問題があるが、要は、菅首相が責任を他人に押しつけているのである。都合の悪いことは、自分が任命した参与たちの責任にするという行動パターンが、誰の目にも明らかになっている。

 このようなリーダーとしての失格状態を厳しく指摘して、菅首相に退陣を迫ったのが、西岡参議院議長である。立法府の長が、行政府の長に対して退陣を迫るというのは、三権分立の建前からしていかがなものかという疑問はあるが、指摘していることは正論である。

 西岡氏の見解は、まず産経新聞、ついで読売新聞が掲載した。この二紙は、その論調を見ると菅退陣に賛成のように思われる。これに対して、朝日新聞や毎日新聞は、国難のときに首相退陣などもってのほかという主張である。

 両論とも、ある意味で正論であるが、菅続投論の中には、「自分たちが政権交代を実現させた」、「菅政権は守らねばならない」といった心情的な発想の論調が多く見られて、菅首相の危機管理の失敗については厳しく追及していない。私は、このような「似非市民主義のポピュリズム」には与しない。

 毎日のように明らかになっていく危機管理の失敗を目の当たりにすれば、この内閣の一日も早い瓦解こそが日本再建への第一歩であることがよくわかる。何としても、首相を取り替えねばならない。

 週末に、李明博韓国大統領と温家宝中国首相が来日し、被災地を訪れ、日本に対して心温まるお見舞いの言葉を投げかけた。この外交成果に気をよくしたのか、菅首相は満足げである。そして、24日にはサミット参加のためフランスへ向けて飛び立つ。外交のパフォーマンスで、危機管理の失敗を覆い隠そうとしている。

 しかし、国際社会が菅内閣を見る目は極めて厳しいと言わざるをえない。放射能汚染水の海洋投棄などは世界の顰蹙を買っているし、情報公開の不徹底さは世界中を不安に陥れている。これから、政府や東京電力による情報隠蔽や情報操作の実態が次々と明らかになっていくであろう。そして、原発事故現場の作業員の人命軽視も問題となっている。

 菅首相がサミットの場で有頂天になってはしゃいでいる最中に、危機管理の致命的失敗を証明するデータや情報が次々と出てくる可能性がある。それは、危険な場所で命がけで働いている作業員たち、日々まともな指示もないまま漂流船の乗組員の心境で働かされている公務員たち、今なお必要な支援が届いていない被災者たちの我慢が限界に近づいているからである。

 日本がもし民主主義国家でないならば、国民の恨みを買っている指導者は海外旅行中に寝首をかかれ、次のリーダーによって国外追放にされて、帰国できず亡命ということになる。菅首相は、日本が民主主義であることに感謝せねばなるまい。

 しかし、本人には、そんな想像力を働かせるだけの資質などないわけだから、このような文章を書くだけ無駄なのかもしれない。

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