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18歳の高卒青年が名門スタンフォード大の研究員になれたワケ

「遺伝子ゴールドラッシュ」の兆しか

学生としては不合格でも…

世界でも一、二を争う米国・西海岸の名門スタンフォード大学。そのバイオ工学部の「Research Fellow(研究員)」に就任したケオニ・ガンダル君は、まだ18歳の青年だ。

飛び級制度が整備された米国のことだから、ガンダル君は十代にして博士号を取得した早熟の天才と思われるかもしれないが、実は彼は高校卒業の学位しか持っていない。

そんな彼が世界的な名門大学の研究職に就くことが出来たのは、あらゆる生物のDNA(≒遺伝子)を自在に改変するゲノム編集技術「クリスパー」の腕前を買われてのことだ。つまり彼は、この驚異的なバイオ技術の専門家として一目置かれる存在なのだ。

ガンダル君が生物学への関心を持ち始めたのは2011年、彼が11歳の頃だった。以来、自宅の寝室にシャーレやピペット、さらには遠心分離機やトランス・イルミネーターなど実験器具を買い揃えて、生物学の研究に没頭してきた。

しかし学校では他の学科に全く関心を持てなかったので、高校卒業の学位すら「かろうじて取得した」という。

このためガンダル君は志望校のスタンフォード大学への入学願書は不合格となったが、他方でそのゲノム編集の並々ならぬ力量を買われ、(学生としてではなく)プロの研究者として同大学に採用されることになった。

これについて彼は「とても皮肉な事ですよね」と(この事を紹介した)ニューヨーク・タイムズ記事の中で語っている。

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「高校生でも使える」は本当だった

ガンダル君にとってラッキーだったのは、彼が独学で科学者としての道を歩み始めた2011年から今日までの期間は、ちょうど(前述の)クリスパーが誕生し、世界的に普及した時期と重なっていたことだ。

クリスパーは従来の遺伝子組み換え技術に比べて、「操作精度の飛躍的な向上」や「あらゆる生物種の遺伝子を改変できる」などの長所を備えているが、それにも勝る最大の特徴は「(クリスパーという技術の)使い易さ」である。

 

クリスパーが注目を浴び始めた当初、その発明者の一人であるジェニファー・ダウドナ博士(米カリフォルニア大学バークレイ校教授)は「クリスパーは普通の高校生でも数週間のトレーニングを積めば使える簡単な技術だ」と紹介していた。

これは単なる誇張や宣伝ではなく、実際にガンダル君のような少年・少女たちが自宅や学校の理科室などでクリスパーを使って、「酵母菌をゲノム編集して緑色に光るビールを作る」「大腸菌をゲノム編集してヒト型インシュリンを生成させる」といった実験に取り組んできた。

様々な生物の遺伝子を自由自在に操作(hack)することから、彼らは今「バイオ・ハッカー」と呼ばれ、大きな注目を浴びている。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55797

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こうしたトレンドに対しては、「生物学の専門知識を持たない彼らアマチュア科学者が(クリスパーのDIYキットを使うなどして)酵母菌や大腸菌のような微生物を遺伝子操作することは、生態系を危険にさらす恐れがある」といった懸念の声が聞かれる。