大手メディアが黙殺する、ヤマトHD「水増し請求疑惑」の深層

告発者の警告を、会社は無視し続けた…
伊藤 博敏 プロフィール

イジメのような勤務体系

引っ越しを受け入れる支店、営業所は、受け入れ作業の関係からボックスの個数や家財の量を把握しなければならない。

だが、「請求書」との間に差が生じるのは計算しなければならず、だから「この帳票は使い終わったら必ずシュレッダーにかけてください。裏紙などの二次使用は絶対禁止!」というただし書きがついている。

槇本氏が解説する。

「引っ越しには、出発の支店である『発作業店』と、到着地の『着作業店』が関わり、支店同士で実際の荷物量を確認するための『作業連絡票』は必要です。でも、『発作業店』で行われている水増しが『着作業店』にもわかり、それが許されているから、その支店でも行うようになる。『作業連絡票』は、結果的に顧客をだますYHCの小道具になった」

法人営業支店が廃止され、槇本氏は高知支店長となるが、自身の支店が発作業支店になった時の「水増し請求」は禁じたものの、着作業店となった時は、注意を喚起するにとどめた。禁止の権限はない。

 

12年11月に定年を迎え、定年延長で17年11月まで乗務員として勤務。権限はまったくなくなり、杓子定規に「水増し請求」を注意喚起してきた過去から、イジメのような勤務体系を組まれるようになった。

その間も槇本氏は、自分の関われる範囲で資料を収集しつつ、個人の立場で高知県労働組合連合会、自工総連高知地方連合会などの労組に加入、会社に注文を付け続けた。

「組合から市原厚史社長(当時)宛てに何度も申し入れ書を送り、交渉を続けました。15年11月18日、16年7月21日と、こちらからは私と労組幹部、YHCからは統括支店長などが出席、話し合いの場を持っています。

私の処遇と水増し請求などのコンプラ問題が議題で、水増し請求問題は解決しないまま、現在に至っています」(槇本氏)

愛社精神と恨みが、ないまぜになった告発。それが8年に及び、交渉を続けてきた過去もあるのだから、ヤマトHDのいう「今後の調査」は通用しない。

筆者の取材に応じる槇本氏

ヤマトHDには、以下の3点を質した。

① 8年前の告発をキチンと処理しなかったことが、「水増し請求」の蔓延につながったという主張をどう思うか。

② 社長宛に文書が送られ、労組を交えた話し合いは繰り返されており、会社側は「水増し請求」の事実を掴んでいた。これまで放置していたのはなぜか。

③ 槇本氏は刑事告発の準備を整えている。会社側は、「水増し請求」した人間の個人犯罪と捉えているのか、あるいは組織犯罪か。

ヤマトHD広報は、個別にではなく、次のようにまとめて応えた。

「ご指摘には一部当社が把握している事実と異なる点、また解釈の相違する点がありますが、現在調査中のため、現段階での回答は控えさせていただきます」

今後の対応に注目するほかないが、ルネサスエレクトロニクスで示されたように恒常的な水増し疑惑が消えない以上、解明は槇本氏の告発を受けて捜査する警察に委ねたほうがよさそうだ。