大手メディアが黙殺する、ヤマトHD「水増し請求疑惑」の深層

告発者の警告を、会社は無視し続けた…
伊藤 博敏 プロフィール

「なんで本社に通報するんだ」

私がヤマトHDに対して行った3点の質問と同社の回答は後述するが、会見を受けた記者からの問い合わせに対し、ヤマトHDの回答は統一していた。

「一部に誤った請求があった事実は確認しており、今後、速やかに調査を進めます」

槇本氏の告発は資料を基にしており、しかもそれを裏付ける実況見分のような赤旗報道があっただけに、「一部」という表記で認めざるを得ない。だが、槇本氏の8年に及ぶ訴えを無視し続けたうえに、「今後、調査を進めます」というのはいかにも不誠実だ。

槇本氏が、発端から振り返る。

「10年当時、私は四国法人営業支店長として、引っ越し作業を行うのではなく、法人を獲得するのが仕事でした。その顧客になってくれたのが東芝系列企業でしたが、そこが愛媛と神奈川間で行った従業員の移動の際、水増しを行っていたのに気付き、本社の内部通報窓口に連絡しました」

この時の処理の拙さが、「水増し請求」の蔓延につながった。誤りを認め、過大請求分の約400万円は返金するのだが、会社側に是正の意思はなかった。

「私の上司に当たる四国を統括する支店長から、『なんで本社に通報するんだ。内々で済む話じゃないか』と、怒られたんです。それが会社の意思でした。だから当該の支店長、営業所長などは処分を受けず、逆に社員の間に『水増ししても構わない』という機運が広がった」(槇本氏)

 

社内の人間であれば、「水増し請求」を見抜くのは簡単である。

会見で使われた資料を例にするが、伝票番号690-5374-7372の「請求書」は顧客に提出されるもので、これは神奈川県横浜市から愛媛県西条市への引っ越し作業が総量2トンで合計金額が18万5325円となっている。

その裏についているのが、顧客には渡さず会社側だけが把握する「作業連絡票」で、伝票番号が同じなので同じ顧客の荷物。ただ総量は圧倒的に少なくボックス数が「2」となっている。

ボックスとはYHCの専用荷物入れで、300キロから600キロを収納できる。それが「2」ということは、最大でも1トン超。それをもとに槇本氏が計算しなおしたのが手書きの数字で、本来なら8万1690円が正規の値段で10万円超が水増し請求分である。