PCやi padは便利なツールだが、「使う医師」と「ないと仕事ができない医師」は違う Photo by iStock
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お金がなければ医師にはなれなかった「マニュアル医師」の危うい診療

「医大裏口入学問題」に思うこと

東京医科大学の裏口入学のニュースを聞き、こう思った方がいらっしゃるのではないでしょうか。

「裏口で入っても、国家試験だってあるんだし、そういう人は医者になれないのでは?」

そうとばかりは言い切れません。医師の場合、医学部に入学し、卒業したら「医者になる」ことをかなりの確率で確約されているようなものなのです。たとえそれが、同業の医師から見て「えっ、この人大丈夫?」という知識レベルの人でも……。

文部科学省の私立大学支援事業をめぐる、東京医科大学の裏口入学問題。汚職容疑で逮捕された前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者の長男は、一次試験から加点されていたとも報じられた。国立大学の医学部を卒業し、現在総合病院で生活習慣病を専門とする医師の小田切容子さんは、勉強不足の人がお金で医師になりうることもある医学部の現状を嘆く。

東京・新宿区にある東京医科大学。一生懸命受験して入った学生にとっても悲しいニュースだった

私大だからダメ、では決してない

最初にお伝えしたいのは、「国立大卒医師がよくて私立大卒医師がダメということではない」ということです。国立の入試を突破した頭脳を持っていても、医師として必ずしも優秀とは限りませんし、私立の大学で、レベルの高い医学部はもちろん、それほど偏差値が高くない医学部を卒業していても、その後の努力で医師としての診断力も人間力も兼ねそろえた医師も多くいます。ですから、卒業大学で医師の価値を決めることは簡単にはできません

私が危機感を持っているのは、本来医師が持つべき知識を兼ねそろえていなくても医師になっている人がいるという現実と、医師になりたいという情熱がそれほどなくとも、親が手を引いてお金を多く払うことでより入りやすい大学があるという事実です。そういう人たちは、「お金がなかったら医師にはなれなかった医師」と言っていいでしょう。

「この人大丈夫?」という人がいるというその背景には、医師を目指した動機や医学部に入学するまでのプロセスが影響しているかもしれません。医学部や医師といういわば「ブランド」やステイタスが第一目標で「手段を選ばず」医師を目指してしまうことは危険です。

もちろん、医師になるには医学部で6年間決して楽ではない勉強をこなして進級・卒業し、国家試験を受けることが必要です。しかし医師国家試験には医大卒業生の約9割が合格しています。ある意味、ほぼ丸暗記でも合格できる可能性のある試験です。もちろん本当は丸暗記ではなく、病態を理解することが当然求められています。しかし、要領よく受ければ、パスすることも不可能ではないのです。

大学としても合格率を下げたくありませんから、明らかに無理な学生は留年となり、留年者数が膨大な大学もあります。とはいえ、「丸暗記」ができ、要領を覚えれば抜け道はあるといえます。

本来ならば、患者さん一人ひとりに向き合い、「この人の体の中で今何が起こっているのか」を見極め、解決するのが医師の仕事です。病名を丸暗記したところで、いろんな病態が複雑にからみあっていることがほとんどですから、見極めるには病態生理をとことん理解しなければならないのです。

しかし丸暗記で試験をパスしてきた医師は、マニュアル通りの診察しかできません。そしてマニュアル通りの診察しかできない医師は、私の経験上私大卒であることが多いように思います。ちなみに慶應医学部は別格で、医師の間では「私大」とは一線を画した認識です。

では、「私の経験上」出会った「マニュアル医師」について何人かの例を挙げてみましょう。