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手術成功率99.7%の外科医が『ブラックペアン』監修で知ったこと

求められる「日本の医療ドラマ」って?
現代ビジネス編集部 プロフィール

医療ドラマの過渡期!? リアルこそおもしろい?

医療ドラマの問題点ばかり上げてきたが、医療業界からもストーリーの質の高さ、精度が高いリアルなテーマがきちんと織り込まれているということで評価されている作品もある。

産科医療の現場を丁寧に描いている『コウノドリ』(TBS 2015年、2017年)は、出生前検査や子宮頸がんワクチンなど、医療現場の課題をきちんと盛り込んでいる点に評価が高い。原作の段階から鈴ノ木ユウ氏が医師の荻田和秀氏に綿密な取材をしているし、荻田医師をはじめとした何人かの産科医がドラマで細かく監修したという。

また、今夏映画にもなる『コールドブルー ヘリ緊急救命』(フジテレビ 2008年、2009年、2010年、2017年)も、ドラマチック感はありながらも、救命の姿勢や治療へは医師からも評価されている。

少しタイプが違うが、不自然死を扱う法医解剖医を描いた『アンナチュラル』(TBS 2018年)も、日本が抱える司法解剖の問題点を加えながら、推理ドラマとしてのエンターテイメント性の高さに人気が集まり、第二弾を望むファンの声も多い。

上記のドラマの共通点は、脚本を作る際、かなり時間をかけて、医療機関に綿密な取材を重ねているという点だ。フィクションであるが、医療現場への丁寧な取材が、フィクションとリアルのいいバランスを作っている。

 

渡邊医師も心臓外科医として見て、秀逸だと思う作品があるという。少し前の作品だが、韓国ドラマの『ニューハート』(韓国MBC 2007~2008年)だ。大学病院の心臓外科を舞台に、権力争いやレジデントの成長などを描いている。

渡邊医師一押しの『ニューハート』。韓国の人気俳優チソンの兵役後の復帰作としても注目された

「こう説明するとありがちに思うかもしれませんが、内容は実にリアル。テクニカルな部分だけでなく、医療現場をよく把握し、医師の心理もよく取材できています。

日本のドラマだと、心臓外科医は神業な手術をするスーパードクターとして派手に描かれがちですが、実際の心臓外科医の世界は、苦労も多く地味です。心臓外科医として開業できることは難しく、手術で亡くなれば訴訟が起こる。大学病院では休暇すら取れません。ハードな仕事を避け、多くのレジデントは、将来美容医療で開業できる形成外科を選択します。心臓外科の担い手は減少傾向にあるのです。

『ニューハート』は、そんな地味な心臓外科の現実ともに、個々がそれぞれ恐怖や孤独と向き合いながら医師として成長していく姿を描いています。私も過去に経験したようなシーンばかりで身につまされましたが、医師として見ても考えさせられる作品でした。視聴率は35%を越えだったそうですよ。心臓外科医のドラマならそういう骨のある作品をそろそろ日本でも観てみたいですね」(渡邊先生)

また、今月から新しいクールの医療ドラマが始まる。また抗議を呼ぶのか、新たなる名作が生まれるのか? フィクションのドラマだからこそ、リアルをどう扱うのかを真摯に考える作品と出会えることを期待したい。

*1)The impact of television fiction on public expectations of survival following in hospital cardiopulmonary resuscitation by medical professionals.

*2)Grey’s Anatomy effect: television portrayal of patients with trauma may cultivate unrealistic patient and family expectations after injury.