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「朝日ぎらい」な人々が世界各国で急増している理由

世の中は「リベラル化」しているのに…

なぜセレブと企業はリベラル化するのか

こうした状況は、政治の世界はもちろん文化やビジネスにおいても止まらないばかりか、ますます進んでいくでしょう。なぜなら、グローバルに活動しようと思えば、「リベラル化」に適応するほかないからです。

その好例が、大統領就任式におけるアメリカのセレブリティやスターたちの振る舞いです。

2013年、オバマ前大統領が二度目の大統領就任式に臨んだ際には、歌手のビヨンセがアメリカ国歌を歌い、場を盛り上げました。ところが昨年1月に行われたトランプ大統領の就任式では、依頼されたすべての歌手が参加を断ったようです。

その理由は彼らが「反トランプ」だからではなく、世界各国にファンを持つ「グローバルなスター」だからです。

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詳しい解説は本書に譲りますが、ここでは大雑把にアメリカの人口を3億人、欧州を3億人、日本を1億人として、それぞれの地域での保守:リベラルの割合を7:3と仮定しましょう。保守が多数を占めるのですから、それぞれの国では「右傾化」が進んでいるように見えます。

ところが、トランプを支持する人々は「アメリカ国内の保守派」だけですから、多く見積もっても約2億1000万人。一方で、それ以外の人々は世界で4億9000万人に達します。グローバルなスターにとっては、トランプ支持の2億1000万人を喜ばせるより、それ以外の4億9000万人にアピールすることがはるかに重要なのです。

 

同様に、世界でビジネスを展開するグローバル企業も、経済合理性で考えれば、リベラル化するしか道はありません。中国での売り上げが日本より何倍も大きいのに、経営トップが「南京大虐殺は幻だった」などと言えば、たちまち巨大な中国市場を失ってしまいます。

「人種や国籍、性別にかかわらず、すべての人(顧客)を平等に扱う」というリベラルの普遍原理を貫徹しない限り、世界でビジネスを行うことはできない時代なのです。

「ダブルスタンダード」の罠

ただ、こうして世の中のリベラル化がどんどん進んでいくと、生きづらさを感じる人も増えていきます。というのも、「ダブルスタンダード」と見なされる言動が激しく攻撃されるようになるからです。

口では「暴力はいけない」と語る政治家が家族に暴力を振るっていたり、「家族が大切だ」と言いながら不倫していたりすれば、それが明るみに出た途端、徹底的に糾弾されます。昨今では、政治家や官僚、大学教授の不倫やセクハラ発言が大きく取り上げられますが、「よくあること」で済まされなくなったのは、昔に比べてダブルスタンダード(あの人ならしょうがない)が許されなくなったからでしょう。

海外でも、インテルのCEOが過去の従業員との「不適切な関係」を理由に辞任に追い込まれたほか、大手動画配信会社のネットフリックスは、セクハラ防止策として「他人を続けて5秒間以上見つめない」とか「長いハグはしない」といったルールを撮影現場に導入しているそうです。日本も遠からず、そのようなPC(政治的に正しい)社会になってゆくでしょう。

道徳的にきびしくなる一方の社会を生き抜くのに必要なのは、高度な「道徳センサー」です。世の中の道徳基準がどこにあって、許容範囲はどのくらいなのかを的確に察知する鋭敏な道徳センサーを持った人が、リベラル化してゆく今後の世界ではうまく立ち回れます。

ただ、そのセンサーを機能させるには、高い知能と高度なコミュニケーション能力も必要で、それを備えていない人はますます生きづらくなり、脆弱なアイデンティティにしがみつくようになる。とりわけアメリカでこの傾向は顕著で、民主党を支持する東部や西海岸のエリート・富裕層と、ラストベルト(錆びついた地域)に取り残されたトランプ支持のプアホワイト(白人至上主義者)の対立がはげしさを増しています。

ダブルスタンダードを排し、シングルスタンダードを徹底するのは、リベラル化が進む社会で生き残るために必須のスキルです。

個人も組織も、言うこととやることを一致させる。世の中の常識から多少外れていても、元ライブドア社長の堀江貴文さんのように、「言っていること」と「やっていること」が一致しているほうが、むしろ信用力が高まる世の中になりつつあるのだろうと思います。