環境・エネルギー

東海第2原発、本当に「こんな状態」で再稼働させるつもりですか

そうか、狙いは別のところにあるのか…
町田 徹 プロフィール

似ているようで全然違う

一見したところ、2つの原発は着実に原発再稼働というレールに乗って着実に進んでいるように映るが、実態はまったく異なる。裁判の世界で、他の原発の再稼働のモデルになるだろうと言われている大飯原発のケースと違って、東海第2原発が再稼働に漕ぎ着けるのは至難の業とみられているのである。

両者の決定的な違いは、地元とそれぞれの原発の関係にある。

 

大飯原発の場合、訴訟を起こしたり、原発に反対する住民が皆無ではないものの、それでも、立地自治体のおおい町や福井県は早くから再稼働を支持を鮮明にしており、総じて地元は原発に好意的だ。

昨年暮れに、関西電力が営業運転の開始から38年が経つ大飯原発1、2号機の廃炉を決めた際の出来事は象徴的だった。おおい町の中塚寛町長が「非常に残念だ」と落胆と戸惑いを隠さなかったのである。長年にわたって大きな事故はなく、関西地域に安定して電気を供給することで基幹産業として地元経済を支えてきた大飯原発に対して、地元の多数の人が共生感を持っているというのである。

半面、日本原電が、東海第2原発の立地する茨城県や東海村、周辺自治体から再稼働の同意をとりつけるのは、非常に困難とみられている。原電は3月、水戸市など周辺5市に実質的な事前了解権を与える新たな安全協定を結ばざるを得なかった。東海第2原発は半径30キロメートル圏内に約96万人が住んでおり、全国の原発で周辺住民の人口が最も多い原発だ。

いざという時、これほど多くの人々を速やかに混乱なく避難させることは、ほとんど不可能だろう。屋内退避も取り入れるとしているが、こうした対応で自治体の同意判断が容易に取得できるとは考えにくい。

以前にも、このコラムで紹介したが、原発のある東海村はもちろん、近隣のつくば市でも市長が「避難住民の受け入れは困難で、リスクが高過ぎる」と強調している。周辺自治体の首長の中にも慎重な意見が根強く、最終的には、行政レベルでの同意の取り付けは困難とみられる、住民投票にゆだねるしかない、と囁かれているような状況なのだ。

そもそも東海第2は、東京駅からおよそ120キロメートルしか離れていない「首都圏の原発」だ。仮に地元の5市が同意したとしても、いざ再稼働となれば、首都圏全体で猛烈な反対運動が起こり、社会的な混乱に繋がる懸念もある

同原発は、東日本大震災の際の津波で非常用電源が停止、全電源を喪失した。福島第一のようなメルトダウンや水素爆発といった最悪の事態こそ回避したものの、安全を確保できたと言える「冷温停止」までに3日と9時間54分を要する綱渡りを経験して、シビアアクシデント対応措置に追われた原発であることを、首都圏の住民が忘れたはずがない。

2011年3月の福島第一原発事故の際に、首都圏各地で起こったパニックを覚えている人も多いはずだ。あの時は、スーパーなどに飲み物や保存食を買い求める人が殺到し、あっという間に品薄になった。外資系企業は競うように東京の拠点を閉鎖して、香港やシンガポールに脱出した。福島よりはるかに距離が近い東海第2で似たような事態が起きれば、首都圏の機能が麻痺して日本の経済社会に深刻な打撃を与えることになりかねない。