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メディア・マスコミ

BBC番組「日本の秘められた恥」を批判する愛国女性の正義感

「女として落ち度があった」って…

同時代を生き、対極の主張をする女性

たとえば性別が同じというだけで、すべての価値観を共有することは限らない。当然のことである。

しかし、ある社会で、ある時代、ある共通項でカテゴライズされる人々が共通に体験する事象は存在する。

杉田水脈氏。1967年4月生まれ。

1965年生まれの筆者とは2学年違いだ。

杉田氏については「お気の毒すぎる国会質問」等ですでに書いたように、私の主張とは基本的に対極にあると思っている。

一方で、ほぼ同時代を生きてきた者として、杉田氏が驚くほど無防備に、物ごとを単純化して書いたり話したりすることについて、なぜなのか、どういった事情がそうさせるかとその背景については若干の関心を抱いている。

なぜなら、その要因のいくつかは私自身も体験してきた日々の中にもあったのだろうから。

昭和の3分の1、そして平成をまるまる使い50年という月日が産み出した「杉田水脈(的女性)」。なぜ私たちは今、彼女との現状認識にズレを感じ、その言動にイラつかなければならないのだろうか。

 

ヒーロー・ヒロイン願望と自分萌え

杉田氏のブログを読むと彼女はアニメにどっぷりハマって子ども時代を生きて来たことがわかる。

杉田氏のお気に入りは「戦闘もの」だ。"同世代あるある"だ。

「『ナニが正義でナニが悪かが判然としない社会で
【正義は必ず悪に勝つ】
という単純で当然だが、大切な構図を子供時代にキチンと意識の中に留めていただけさえすれば、
それはそれで十分意味のあることだと思う』 
by石ノ森章太郎

というわけで(ってどういうわけで )今夜は夜のみおちゃんねる みてくださいね」

石ノ森章太郎の言葉が、杉田氏の自己肯定感を高める。

「夢のようなお誕生日」と記述した日も、感謝するのは「ヒーロー・ヒロイン」。

「ヒーロー大集合(ハートの絵文字)本当に夢のようなお誕生日でした(誕生日ケーキの絵文字)私がぶれずに生きてこれたのも、いつも心の中に集まってくださったヒーロー・ヒロインがいたからです。
今日からまた気持ちを引き締め、日本のために頑張って参ります」

そして、彼女のヒーロー観をこう披露する。

「国を愛すること。愛する国を、愛する人を守ること。ヒーローの原点です」

なぜそこまでヒーローに萌えるのであろうか。

ヒーローの成り立ちを考えれば、その理由は明らかかもしれない。

漫画やアニメやテレビドラマでは大抵冴えない平凡な青年が、なにかしらの「権威」を持つことによってヒーローに「変身」する。

もしくは、「半分、青い。」のように主人公に笛を吹いてマグマ大使を呼び出す、とか。

杉田氏とってはそれが「日本」「愛国」。この呪文を唱えれば、自分は普段以上に強くなれると実感しているのだと思う。

そして、何かあれば「桜井よしこ先生」という印籠を出す。

なにげに「愛国」は最も簡単な「お手軽変身」グッズなのである。

「今朝は靖国神社からスタートです。ここに来るといつも原点に帰ることができます」
「主権回復の日。伝統と創造の会で靖国神社に参拝しました。この後10時30分から、今度は龍馬プロジェクトで靖国神社昇殿参拝→総会です」
「東京に戻る前に勤皇の志士の御墓参り。」
「今日は一日山口県内を挨拶回り。吉田松陰先生にもご挨拶。これからは悩み事や困ったことがあったら、松陰先生に相談に来ます。素敵です、山口(ハートの絵文字)」

靖国神社への参拝や維新の志士たちの墓参は「愛国」を可視化するわかりやすい行動だ。「龍馬」を唱えれば、同志・同腹を集めることも容易い。

時には滝に打たれる修行もすすんで行なう。すべては「自分萌え」。ヒーローへの道なのである。

「愛国」の呪文は現世利益をもたらす。女性の人口密度がそう高くない業界では、競争よりも共存重視。比較的簡単に雑誌への寄稿や、講演の機会が巡ってきて、「愛国」業界の貴重な女性論客として重宝されるのである。