Netflixが「住所や年齢」を必要としないたった1つの理由

副社長が明かす「もっと使える情報」?
西田 宗千佳 プロフィール

「みんな、年齢や性別を重視しすぎている。どんなところに住んでるかなんて、視聴の傾向には関係ない。だって、日本人ならみんな同じ趣味、なんてことはあり得ないからだ。日本で見ているあなたと同じような趣向をもつ人が、オーストラリアにいるかもしれないだろう」(イェリン氏)

彼らの経験として、趣味や趣向は年齢や地域を考慮せず、純粋に視聴データからレコメンドしたほうが精度は高いようだ。またその場合、ある国で調達したコンテンツを他の国の人々に勧める、ということもしやすくなる。

Netflixは、自社で制作するコンテンツについて、可能なかぎり「全世界で同じように配信する」方針を採っている。各制作地域ごとの好みなどももちろん考慮はするが、「Netflixが出資して制作する」場合には、全世界で支持を得られる作品にすることを、制作上の基準としている。

そうすることで、より多くの視聴者を獲得でき、コンテンツへの投資・回収効率が高まるからだ。そのような方針でビジネスを展開する場合、「地域」にこだわってしまうと、確かに効率は悪くなる。

事実、日本で制作したNetflix向けアニメ作品のほとんどや、ドイツ、インドなどで制作されたドラマ作品は、視聴者の9割が制作国「以外」の居住者であるという。

「個人情報」よりはるかに重要な「行動履歴」

以上のことから、いくつかの重要なポイントが見えてくる。

ネットでビジネスをする場合、「できるかぎり個人情報を集めるべきだ」という人が多い。会員制にして囲い込み、顧客のプロファイルをアンケートなどを使って得ておくことが大切だ……という発想だ。確かに、それは一面の真実である。

だが、そこでいう「個人情報」とは、単に氏名や住所などの情報を指しているわけではない。

アンケートに伴う、名前にひもづいた「古典的な個人情報」を必死に集めても、それが直接的に精度の高いレコメンドにつながることはない。むしろ、匿名ではあっても「こういうふるまいの人は、こういう属性である」ことを示す情報、すなわち、「行動履歴」のほうが、より重要な情報になっている。

そこに名前はなくても、「あなたが行動した情報」が価値をもつ時代になっているのである。

【写真】顧客の情報〜古典的な個人情報より行動履歴のほうが重要?
  古典的な個人情報より行動履歴のほうが重要な時代に photo by gettyimages

ユーザーが知っておくべき「注意点」

「個人情報流出」という観点でいえば、氏名や住所がひもづいた情報を蓄積していくほうがリスクが高い。行動履歴もまた個人情報であり、プライバシーの保護には最大限の注意を払う必要があるが、氏名に代表されるいわゆる「センシティブデータ」が必要不可欠なのかどうか、もう一度考え直す必要はあるだろう。

一方で、多くの企業が、個人の行動履歴を大量に集めていることは、もう少し認識されてもいい。

ウェブやアプリ上での選択は、すべて「行動履歴」という名の個人情報として集約されている。Facebookのプライバシー問題の根本はここにある。NetflixやSpotifyなどのコンテンツサービス大手は、ユーザーの趣味・趣向に関する膨大な行動履歴を集めていることを忘れてはならない。