Netflixが「住所や年齢」を必要としないたった1つの理由

副社長が明かす「もっと使える情報」?
西田 宗千佳 プロフィール

「見つからないコンテンツ」は、ないのと同じ

そして、こうしたサービスは、各ユーザーが好むであろうコンテンツを教えてくれる「レコメンド」機能なしには成立しない。

冒頭で述べたように、ネットの店舗では好みのものを見つけづらい。作品や商品の名前などがわからなければ、検索にも意味はない。

そもそも、リラックスして「なにか面白いものはないかな」と思っているときに、検索機能などを使って一生懸命探すのは似つかわしくない。

いくら大量にコンテンツが存在しても、見つからなければ「ない」のと同じだ。見たいコンテンツがない、もしくは「もう見てしまった」とユーザーに思われてしまったら、契約を継続してもらうことはできない。

だからこそ、サブスクリプション型サービスを提供する企業にとっては、クオリティの高いレコメンド機能の提供がきわめて重要な要素になってくる。「見たいもの・聴きたいものがすぐに見つかる」ことは、収益に直結しているからである。

【写真】クオリティの高いレコメンド機能の提供が要素
  クオリティの高いレコメンド機能の提供がきわめて重要な要素だ photo by gettyimages

コンテンツサービスがアンケートを取りたがる理由

では、そのレコメンドとは、どのように働いている機能なのだろうか?

簡単にいえば、「データベースからの抽出技術」である。あなたが好きと感じるであろうコンテンツの種別を、サービスに登録されている作品のデータとマッチングし、リスト化する。ポイントは、「あなたが好きと感じるであろう作品」の見つけ方であり、そこに各社の工夫と技術がある。

最もシンプルな方法は、好きな作品やアーティストの名前、ジャンルなどを登録させるものだ。入会時にアンケートに答えさせるサービスは少なくないが、その理由がこれだ。年齢や居住地を聞くものもあるが、その理由もまた、そうした情報がレコメンドの精度を高める手がかりになるとされているからである。

このような情報は、コンテンツを配信する事業者だけでなく、コンテンツを制作する企業にとっても貴重なものとなる。実際に各テレビ局等は、こうした部分に着目し、自社で配信サービスを運営することにこだわっている。

Netflixはなぜ、アンケートを取らないのか?

一方、アンケートをいっさい取らないサービスも増えている。

世界最大の映像配信事業者であるNetflixが、その点にこだわっている代表格だ。

【写真】Netflix本社屋
  米国カリフォルニア州ロスガトスのNetflix本社 photo by gettyimages

Netflixでは、視聴にあたって決済のために名前やクレジットカードの情報は登録する必要があるが、趣味・趣向についてのアンケートに答える必要はまったくない。

「なぜやらないか? アンケートよりももっと、利用者の好みを知る方法があるからだ」

Netflixでレコメンデーション技術の開発を統括するプロダクト担当副社長のトッド・イェリン氏は、筆者の問いにそう答えた。

Netflixはアンケートの代わりに、「どんなコンテンツを見たか」「どこまで見たか」「次になにを見たのか」といった、ユーザーの"ふるまい"をすべて見ている。

実際に視聴したコンテンツからは、そのユーザーの好みの傾向がわかる。だが、単に再生しただけでは、「本当に好みである」とは断言できない。

最後まで見たコンテンツであれば、「好み」である確率が高まるだろうが、途中で止めたなら「じつは好みではなかった」可能性が高い。続きをどんどん見たなら、単に好みであっただけでなく「相当に気に入った」ということを示しているだろう。

特に、サービスを使い始めてからすぐの視聴情報は重要で、そこからはかなりの精度で個々のユーザーの「好み」が見えてくるのだという。

「年齢や性別と、視聴傾向は無関係」

こうした情報からレコメンドを抽出する際、Netflixはそのユーザーの「年齢」や「性別」、「居住地」といった情報を使わない。そもそもそういう情報を記録していないのだが、それ以上に、年齢・性別や居住地にこだわることに意味がない、と考えているからである。