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発達障害の妻と「我が家の将来の話」ができない理由

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【7】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第7回です。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

マジで頼りにならない

「妻よ、俺今晩仕事ないから、猫のトイレ砂の買い出しに行けるぞ」

「大ちゃん、夜の奉行ってヤバくない?」

「いや、猫砂って何袋残ってる?」

「夜の奉行とか……鰻パイか!」

(話しかけたときに観ていた時代劇に出てきた夜の奉行という言葉に集中し「思考の切り替え」ができない注意欠陥お妻様)

ああ、鰻パイですね!

毎度毎度の、日々すれ違いな我が家の会話……。

さて、第5回6回と、不定型発達さんなお妻様の話が分かりづらいことや、僕の話を彼女が理解してくれなかったり、常にアウェイな返答が返ってくるなどの「話が通じない」について書いてきた。

前回までの結論はまず、僕の話し方や聞き方の配慮で、ずいぶんこのお困り感は解消するということ。そして彼女との会話が面白い理由はむしろ彼女の不定型発達な特性から来ているという、気づきだった。

だがそれでもなお、20年近く一緒に暮らしてきた僕が大変困って来た「話が通じない」ネタが残っている。それが、お妻様とは「将来について話し合うことが一切できなかった」ということだ。嗚呼、「ふたりの将来を話し合おう」と言えば、まず連想されるのは、結婚だろう。

僕がお妻様にプロポーズしたのは同棲から5年経った頃のことだったけど、あの時の会話は忘れられない。

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「結婚してください」(マジ顔)

指輪を渡した僕に対して彼女の返答はこうだった。

「この指輪を質屋に持っていったらいくらになるかな」(マジ顔)

「……」

まあこんな返答は、彼女に「頭の中に思い浮かんだ言葉をそのまま口にしてしまう特性」があるのが原因と、いまならわかる。一生のネタだけどな。けれども問題は、その後のことだ。

 

通常、カップルが結婚に至るまでには、多くの相談事があるだろう。両家に挨拶に行く日取り、親族に案内状をいつ出すか、式場の見学や予約をいつにするか、そもそも挙式をいつ頃にしようか……。けれどもなんと、彼女とはそうした話が一切できなかったのだ。

当時のお妻様の対応と言えば、まず分厚い結婚情報誌を買ってきて、読まずに寝室の枕元に放置プレイ。その上に更に関係ない本が積まれていくのを見かねて話をしようにも、こんななのだ。

「どうするよ式場。なんかいいとこあった?」

「いいよ、大ちゃんが決めて」

「まあ、式場を俺が決めるのはいいけど、いつにする? 秋ごろかな?」

「あたしそんな先のことわかんない」

「でもそれ決めないと、案内も出せないじゃん。案内出すなら早めにしないと、先方にも都合があるんだから」

「いいよ適当で」

い…い…イライラする!!

結局当時、結婚式については、元々僕自身が結納とか夫婦同姓なんかのしきたりや制度にジェンダー的大疑問を抱えていたこともあり(今もだが)、なおかつこんなお妻様と一緒に計画を立てるのは無理っす! と判断し、参席者の範囲は両家両親と祖母と僕の姉家族までというシンプルなものに縮小。友人を集めての披露宴などもやらずに済ませてしまった。

あらゆる日取りの設定や手配は僕主導の僕一任だったが、傍観する彼女の定型句は「忙しいのは大ちゃんなんだから、大ちゃんの都合のいい日程で考えればいいじゃん」「あたしは先のこととか考えられないから」

そしてそして、その後の人生でも、こうした「未来の予定を考える」の会話は一切できないお妻様なのだった。このすれ違いには夫婦生活の要所要所で苦しんできた。

貯金して中古の一戸建てを購入したいけどどう思う?

どんなエリア、どんな家に住みたいか?

家を買ったから引越の予定を立てよう。

年老いていく親のケアは、どうしていこうか。

取材記者以外の仕事に挑戦してみたいがどうか。

僕自身が脳梗塞で高次脳障害の当事者となって、その後の収入や人生をどう設計していくべきなのか。

そんな人生にかかわる相談のみならず、庭にどんな植木を植えて将来どんな庭にしていこうかとか、旅行に行く日取り、旅行に行った先でどんなスケジュールで動くかなんてことまで、彼女の返答は「大ちゃんの好きに決めればいいじゃない」なのだ。

妻とは未来の話や将来設計ができない。悪く言えば「マジで頼りにならない」。それは、やっぱり僕の中では大きなお困りごとなのだった。