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石原さとみ主演作は裏切らない!今年の「夏ドラマ」を一気読み

『この世界の片隅に』も期待大
いよいよ7月期のドラマがスタートします。せっかく見るならおもしろい作品で感動したいところ。そこで「ドラマ狂」のコラムニスト・堀井憲一郎さんにご登場願いました。主要作をピックアップし、期待がかかる作品を一挙にご紹介。これを読めば、あなたが見るべきドラマがわかります。4月期ドラマの魂のレビューと一緒にどうぞ!

決めゼリフで考える4月期ドラマ

4月期のドラマでもっとも見られていたのは二宮和也『ブラックペアン』だった。

次いで波瑠『未解決の女』

平均視聴率が10%を越えたのがこの2作だった。

『ブラックペアン』は物語の“引き”が強かった。次はどうなるのだろう、とおもって見続けていた。でも全話見終わったいま、すでに内容がぼんやりしている。ブラックペアンというタイトルと、体内に残されているシーンが、印象的におもいだせるだけだ。あとは“なんか、おもしろかったなあ”という感想だけである。それはそれでいいドラマだったということなのだが。

ドラマは、どこかに一つ、切り裂くような、人の心に残る強いシーンを提示しないと、忘れられてしまう。心に残るシーン、強いセリフ、ないしは圧倒する登場人物の表情でもいい。何か日常を越えたものがないと、人の心に届かない。

『未解決の女』では、鈴木京香の「文字の神様が降りてきた」というセリフがあった。このセリフが少し心に残ったが、でも半分お約束で作られているようなもので、鈴木京香自身が半笑いで言ってる気配があった。

このドラマでは波瑠演じる刑事が、撃たれて倒れたシーンが強く残っている。撃たれて倒れて、それで週をまたいだ。まあ、死んでないとおもっていたし、ありがちなオチだったけど、でも印象には残った。このドラマは、ただ、波瑠と鈴木京香のコンビが楽しかったのだ。たぶん、続編が作られるんだろう、と期待するばかりである。

 

終わり方に疑問が残った2作

比較的おだやかな展開の多かった今クールのなかで、激しい展開を見せていたのは『シグナル』『モンテクリスト伯』だった。

激しい展開でぐいぐいと惹きつけ、そして、心配したとおり(私が勝手に心配していただけだが)、よくわからない終わり方になってしまっていた。

途中の展開でどうなるんだろうと気になったが、結局、どうにもならなかった。どうなったのかわからなかった、とも言える。

『シグナル』は、真犯人を追う、という警察ドラマの本筋とは別に「過去に干渉して未来を変える」というテーマが大きく関わっていた。それが最後の最後で、死にかけた主人公が過去が変わったので死なない、という裏ワザのように使われていた。かなり大胆というか雑というか。詰めが甘い。

問題を絞ってしまえば、過去が変えられた場合、当事者(主人公の坂口健太郎)の記憶は、どの時間軸の記憶が基本になるのか、その基準が明確ではない。

主人公だけ、もともとの記憶が有効なのは何故か、という疑問に科学的な説明はできないだろう。おそらく「それを切り替えると、ドラマとして成立しないから」が理由のはずだ。そのへんはちょっと無理が重なっていた。無理があっても物語としては面白かったからそれでいい。ただ、最後の最後に物語のまとめるときに、いくつかの説明は切り捨てられる。すべての辻褄は合わせられない。しかたない。

『モンテクリスト伯』は、復讐譚だった。復讐を果たし、愛によって許せる人は許し、本人は姿をくらました。その生死は定かならず。

素朴な復讐譚では、自分を陥れたすべての悪を制裁して物語は終わる。この物語の復讐は途中で終わっていた。穏やかな許しは人を安心させるが、物語としては完結せず、主人公に沿って見ていた気分は途中で放り出された感じになった。ただ、途中の衝撃的なシーン、たとえば死を覚悟した山口紗弥加の表情などが心に残るばかりである。