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世界経済に漂う「前代未聞の暗雲」の、現時点での正しい読み方

やっぱりトランプは正気じゃないのか…

あまりにも非常識

米国のトランプ大統領が7月2日、世界貿易機関(WTO)からの脱退を示唆した。中国に対する制裁関税も6日から、一部を発動する見通しだ。トランプ氏の保護主義路線は、どこまで本気なのか。

忙しい読者のために、私の結論を先に言えば、どうやらトランプ大統領は本気で中国をはじめ、各国との貿易戦争を戦うつもりのようだ。そうだとすれば、日本はもとより、世界経済にとって悪影響は計り知れない。

世界の株式市場はすでに「トランプ政権の保護主義加速」を発信源とする多くの悪材料を嫌気して、下落している。しばらくは神経質な展開が続くだろう。

株価だけではない。7月2日に発表された日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)では、代表的な指標である「大企業・製造業」の業況判断指数(DI)が前回調査から3ポイント悪化した。水準自体はプラス21とまだ高いが、先行きは慎重な見方が広がった。

 

とくに、トランプ政権から25%の関税をチラつかされている自動車産業は、前回のプラス22から同15に7ポイントも悪化した。先行きはプラス13と一段の悪化を見込んでいる。現状で2.5%の自動車関税が10倍になれば、関連産業には大打撃である。

しかも短観への回答時期は、トランプ政権が中国に対する2000億ドル規模の追加制裁を発表する前だった。発表後の回答であれば、もっと悪い結果になっていたに違いない。

トランプ大統領の交渉術について、私は6月8日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56015)で指摘したように、「『コワモテ(強面)』と『ヤサガタ(優形)』の使い分け」が基本パターンとみていた。

北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に対する態度が典型的だ。空母3隻を動員して、思い切り軍事圧力をかけたかと思えば、相手が動揺して対話を求めてくると、態度を一変させ、周囲が反対するのもかまわず、即決で会談に応じた。

通商問題でも、まず思い切りビーンボールを投げて相手をのけぞらせおいてから、おもむろに優しく交渉をもちかける可能性はある。だが「WTOからの脱退」まで口にするようだと、そうとばかり楽観はできない。あまりに非常識すぎるのだ。

トランプ氏は何と言ったのか。

大統領はオランダのルッテ首相との会談に際して、ホワイトハウスで記者団に「米国はWTOで極めて不利な立場に置かれている。現時点では何も計画していないが、WTOが米国を適切に扱わなければ、何らかの行動を起こす」と述べた。

言うまでもなく、WTOは世界の自由貿易の基盤だ。前身の関税貿易一般協定(GATT)は、世界経済のブロック化が第二次世界大戦の遠因になったとの反省から、国際通貨基金(IMF)と並ぶ自由主義経済の支柱として設立された。

米国はWTO・IMF体制の下で、自由主義経済のリーダーとして君臨してきた。そんな米国の大統領がWTO脱退をほのめかすとは、自由貿易を頭から否定するような態度と言わざるを得ない。