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夜も眠れない…在宅介護最大の難関「胃ろう」「腸ろう」の現実

現役証券マン・家族をさがす旅【23】

78歳で倒れ、入院した父。息子で40代の「ぼく」は、ぶっきらぼうで家族を顧みなかった父にずっと反発を覚えていたが、父に前妻がいたこと、そして自分の腹違いの兄が存在することを聞かされて以来、家族の過去を調べるようになっていた。

父は2度の手術を終え、転院を経て自宅療養に切り替えることになった。口から栄養がとれないため、胃ろう・腸ろうが必要になる。同居して介護をする母は、その対応で疲弊しつつあった…。

現役証券マンで作家の町田哲也氏が、実体験をもとに描くノンフィクション・ノベル『家族をさがす旅』。

続けて3時間以上寝られない

父がR病院を退院したのは、10月27日のことだった。母が9時に迎えに行くと、看護師が荷物を運んでくれた。退院の費用は3万5400円。このほかに衣類のリース代がかかる。30万円の保証金も返してもらった。

11月7日に予定される次回診察までの薬と、腸ろう、胃ろうの器具を2セット車に積んで家に帰った。腸ろうは栄養剤を体内に流し込むために、点滴台のようなスタンドとチューブが必要になる。

胃ろうは胃にたまったものを流すので、廃棄袋とチューブを備え付ける必要がある。胃と腸がふたたびつながるまでは、どこに行くにもスタンドを持ち続けなければならない。

 

ベッドは前日に設置してあったが、父が頭の向きを反対にして欲しいというので、業者が来たときに向きを変えてもらった。点滴をつけた車椅子、玄関の段差、トイレのつかまり用の棒も設置してもらった。

午後2時頃、予定通り看護師2人が来ると、腸ろうのチューブの接続具合や血圧、体温、お腹の状態などを診てもらった。

またベッドの高さや胃ろうの廃棄袋の位置を調整してもらい、腸ろうの栄養剤を流し込むスピードもアドバイスしてもらった。今後は月曜、水曜、金曜の週3回来て、シャワーとお腹の処置等をしてくれるという。

父は徐々に落ち着いて、久しぶりにテレビを見る気持ちになったようだ。退院してすぐは不安だったのか、チューブは大丈夫かと何度も訊いていたが、ベッドや身の回りに置くものの位置が決まって安心したのだろう。

母は深夜1時半に起きて腸ろうの流れ具合を確認するつもりだったが、時間通りに起きられなかった。

2時を過ぎると、チューブが少し詰まっていた。水を勢いよく入れるとふたたび流れはじめたが、5時半に薬を入れたところで完全に栄養剤が止まってしまい、急いで看護ステーションの夜間対応窓口に電話した。

看護師がすぐに来てくれたが、栄養剤が固まってなかなか水が入っていかない。あきらめてメディカルセンターに連絡したが、夜間は医師がいないので対応できないといわれてしまった。

翌朝9時に外来受診に行くと、土曜日だからか相当の混み具合だ。診てもらったのは、13時半頃だった。

チューブの詰まりは、医師が細い注射器を使って取り除いてくれたのですぐに解決した。しかし待っている時間が長かったため、気分が悪くなった父は椅子に横になっていた。朝対応に来てくれた看護師が、心配して電話をくれた。

この日は腸ろうのチューブの不具合だけで、半日を費やしてしまったことになる。父は自宅に戻ると安心したのか、テレビを見てひとりごとをいっていた。

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家では24時間看護だ。4時間ごとに腸ろうに流し込む栄養剤を取り換えるだけでなく、1日3回の薬の投入、1日2回の胃ろうの廃棄袋の洗浄をする必要がある。

同居する母の生活は、大きく変わった。昼間はコンビニでアルバイトがあるが、あまり長い時間父を放置しておくことはできない。夜中も4時間おきに処置する必要があるので、続けて3時間以上の睡眠はとれない。うっかり寝過ごしてしまうと、チューブが詰まってしまう。