社会保障・雇用・労働

「定年後に終わる人」と「定年後から始まる人」の、ほんの少しの差

「薄く広い人脈」を作れますか?
清水 計宏

自立・起業したければ「薄く広い人脈」の方が役立つ

さて、定年を迎えて、どのような人脈作りをした方がいいのか。

勤務していた会社内の人間関係はいったん退職したら、しばらく余韻は残るものの、あまり使いものにはならない。また、親しくしている友人を当てにすると、一緒に仕事をするうちに友人との間が険悪になり袂を分かつことにもなりかねない。

親しい間柄は意外と利害関係には向かないのだ。かえって薄く広い人間関係がものをいったりする。自営や起業で再出発しようと思っている人は、業界を超えて薄く人脈を広げておいた方がいいかもしれない。

 

最近では、副業を容認し、さらに奨励する企業も増えている。企業人として成功を諦めた人は、しだいに愚痴が増え、自立・自発性も失われがちになる。

副業は、自らの実力を試し、情熱を取り戻し、人間関係を広げる上でも歓迎すべきだろう。ただし、金儲けを優先して疲労を貯めていけば、体調を崩すこともなりかねない。

副業は、自らのブランディングを図る「自業」ととらえた方がいい。

夢の実現に近づいたり、社会とのつながりを太くして自らの存在と価値を見直したりすることは、本業にもプラスになるはずである。多くの人に自らを知ってもらう機会にもなり、そんな自立心や対外的な関係が定年後にも役立つはずである。

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総務省や国立社会保障・人口問題研究所の調査を元にすると、国内では役員を除く雇用者では毎年60歳代で定年を迎える人は約70万人いる。定年後も約8割は就業を希望しており、働けるうち働く傾向が強い。

定年後に、思い描いていたことを一つひとつ実現していき順風に恵まれる人もいれば、長く連れ添った女房にも愛想を尽かされ、コミュニティから離れて居場所がなくなって孤独の中で寂しく過ごす人もいる。

人の価値を貶めても、自身を偉く見せることにはならない。逆に自らの価値も貶めることになる。互いに価値を認め合ってこそ、人とのつながりは落ち着く。

部下を守らずに、上の言いなりになり、職務上の地位や立場を背景に弱い取引先を値切り倒したり、嫌がらせをしてきた人には暗澹とした定年後が待っているかもしれない。

自立・自活できるかどうかの判断も、最後は自身が信じられるかにかかっている。逆に言えば、それは人から信頼されてきたかの裏返しでもある。

人は与えた分しか、得ることはできない。在職中にいかに人に多くを与えてきたか、どれだけの人を育ててきたかが問われる。

まさに"Give&Take"であり、決して"Take&Give"ではない。仕事のできる人とは人の力を集められ、それを自らの力にもできる人である。

人から奪ってきた人は奪い返されると覚悟しておいた方がいい。定年後の明暗を分けるのは、アナログな人間関係をいかに大事にしたかにかかっているといって過言ではない。

【定年後を豊かに生きるための7カ条】
1.中小零細業者の取引先は値切り倒さない。値切るのであれば大手企業に対してすること。
2.セクハラ、女性蔑視は禁物。下を守り、上には是々非々で望む。
3.人の価値を貶めない。他の人を価値ある人と認める。
4.多くの人に与え、人を育てる。与えるものは親切や声かけでもいい。
5.対外的な人間関係は薄く広げながら、自身のブランディングを図っておくこと。
6.副業は自己ブランディングを図る「自業」と心得る。
7.信頼を損ねることはしない。自営・自立・起業ができるかは、自分自身が信じられるかにかかっている。それは信頼されているかの裏返し。

◎参考:
オランダの保険大手のエイゴン(AEGN.AS)の「定年退職に関する意識調査」(SuccessfulRetirement-HealthyAgingandFinancialSecurity):