創刊40周年に装丁を大リニューアル

「現代新書」の逆襲!〜ゼロ年代の“新書大爆発”の中で見出した活路

講談社現代新書の歩み〈5〉
講談社現代新書の創刊から現在までの歴史を振り返る「現代新書の歩み」。最終回となる第5回は、2004~13年の10年間をたどります。出版不況の長引いたこの時期、新書は刊行点数が激増し、“大爆発”ともいえる様相を呈しました。
創刊40周年を迎えて装丁をリニューアルした「現代新書」も反転攻勢に。「“良書”であり、かつ“ヒット”する新書作り」という方針に活路を見出します。

デフレと成果なき政権交代

経済指標によれば、2002年から07年までこの国は「戦後最長の景気拡大」をつづけていた、らしい。ただ、誰もそんな実感を持っていない。そして08年9月のリーマン・ショックを機に、経済の落ち込みは顕著になっていく。「デフレからの脱却」が政財界でしきりに叫ばれた。

リーマン・ショックのあった2008年には、秋葉原で無差別殺傷事件が起きている。この頃から、ロスジェネ、派遣切り、ブラック企業といった言葉がしばしば聞かれるようになった。

そして、2011年3月11日、東日本大震災が起こった。津波による大災害に原発事故が重なり、あれから3年が経った今も故郷に帰れない多くの人がいる。

自民党政治は5年5ヵ月続いた小泉政権が2006年9月に終わった後、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と毎年首相が交代し、2009年にいたってついに民主党政権が誕生するも、2012年にはふたたび自民党の安倍が「日本を取り戻す」と言って政権を奪取した。

いったい日本の何が失われていたのか、よくわからないままにとにかく政治は「一周」回った。

第二次安倍政権は円高是正をめざし、「異次元の金融緩和」を日銀に命令する。その政策は「アベノミクス」と呼ばれ、実際、円安に誘導され、株価は持ち直した。とはいえ、少子高齢化による社会保障費の増大をはじめ課題は山積している。

身近な暮らしに目を向ければ、IT化の流れが急速に展開していることがわかる。携帯電話の普及率は2011年に100%を超え、2008年には日本でもiPhoneが発売。

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FacebookやTwitterをはじめとするSNSもこの10年で一気に開花し、誰でもどこでもつながれる時代となった。

何かわからないことがあったときに、とりあえずインターネットで検索してみるという行動パターンが普遍化したのも、電車のなかで携帯画面を覗き込む人が激増したのも、この10年の現象と見て間違いないだろう。

社会の隅々に及ぶこれらの変化は、当然、私たちの消費行動を変えていった。

 

長引く出版不況

出版界ももちろん経済・社会の動きと無縁ではなかった。

出版不況」は長引き、市場規模は年々縮小を続けている。2009年には2兆円を割り込み、2012年には1兆8000億円を割り込んだ(出版科学研究所)。ピーク時の1996年と比べると、実に3分の2にまで市場が縮小したことになる。

ITとの関連で言えば、この間に、電子書籍という新しい動きも始まっている。2012年には楽天Kobo、そしてAmazonのKindleが相次いで日本の市場に登場した。

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なぜ本は売れなくなったのか。

活字離れとよく言われるが、実のところ、インターネットやメールのやりとりなどで文字と接している時間は減っていない。

それよりも、インターネットと携帯電話があまねく広まり、SNSが次々に流行り、携帯ゲーム会社が急成長するなど、要するに個人の限られた「可処分時間」を奪い合う競争相手がどんどん力をつけてきた、ということが大きいのではないか。

この時期、出版業界内では「雑誌が売れない」「単行本が売れない」ということが時候の挨拶のようにささやかれるようになった。

たとえば、総合論壇誌が消えて行く。

2008年には『論座』と『月刊現代』が、2009年には『諸君!』が、2010年には『フォーサイト』がなくなった。それにかわって、ブログなどのネット論壇が注目を集めることが増えた。雑誌の看板だけを残して、舞台をネットに移す動きもある。

店頭を盛り上げようと、全国の書店員がいちばん売りたい本を選ぶ「本屋大賞」も2004年からスタートしたが、定価の高い単行本も苦戦を強いられるようになる。そこで目をつけられたのが、定価が安い新書だった。