北米でみられるアメリカミズバショウ(筆者撮影)
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ミズバショウや杉も?日本の植物がなぜか「北米大陸」で見つかる謎

「隔離分布」現象と言われている

なぜトランプは「東回り」でアジアに行くか

例年よりかなり早く梅雨明けを迎え、7月に入ってすぐに夏がやってきました。今回のお題は、「夏がくれば思い出す…」でおなじみ、「ミズバショウ」と「アメリカ」の関係です。

先日シンガポールで行われた米朝首脳会談会談で、米国のトランプ大統領は、太平洋経由ではなくヨーロッパ(ギリシャ・クレタ島)を経由するルートをとりました。意外に思った方も多いかもしれません。北米から日本や中国への直行便の場合、西回りルート(太平洋の側)を飛ぶのが普通ですから。

トランプ大統領のエアフォース・ワンがクレタ島へ向かったのは、給油施設の関係とのことです。ただ欧米の人々には、少し大げさな言い方ですが、もしかするとこんな深層心理もあったのかもしれないと感じます。「西洋世界の盟主が、はるか遠い極東地域へ『東征』する」――。

筆者の世代が若い頃は、「中近東」という言い回しがよく使われていました。欧米から見て東方にあるアジア世界のうち、欧米により近いのが西アジア、そして東アジアはその先、すなわち最も遠く離れた「極東」というわけです。

こうしたものの見方は、政治、経済、宗教、文化といった分野だけのことと思うかもしれません。しかし実は、人間社会とはかかわりなく成り立っているはずの野生生物の世界でも、同じ図式が当てはまります。

動物か植物かにかかわらず、なぜか不思議なことに、東アジアに特有の生物群が北米大陸の、それも距離的に近い西部ではなく、日本から遠いはずの東部地方(アパラチア山脈周辺部)に「隔離分布」しているケースが極めて多いのです。

 

日本とアメリカにだけ咲いている

ある年の春、筆者は、東アジアと北米東部に隔離分布する蝶や植物を撮影するために、北米東部のテネシー州を訪れました。ターゲットの一つが、「ゴールデン・クラブ」という名のミズバショウ近縁種。フィールド・ガイド・ブックなどに記されている地名を頼りに、ずいぶんあちこちを探し回り、テネシー州とケンタッキー州の境の山中にある「リリー・ヴァレー」という渓谷で、やっと見つけることが出来ました。

米テネシー州で撮影したゴールデンクラブ。花のような「仏炎苞」を持たない
同じくテネシー州で見つけたアメリカアジサイ

ちなみに、渓谷の川岸の薄暗い林内には「アメリカアジサイ」の冬越した枯れた株が、びっしりと覆っていました。どうしても野生の花を写したくて、7月中旬に再訪して撮影したのが、ここに紹介したアメリカアジサイの写真です。

ミズバショウといえば、唱歌『夏の思い出』。でも、誰でも知っているこの歌詞には、いろんな誤解が伴っています。この曲で歌われたことから?ミズバショウ=「夏の尾瀬」という印象が強く、夏の深山に咲く植物と思われている節があります。

確かに、ミズバショウの群落として著名な地の一つ、北アルプス白馬岳中腹の栂池高原などの高標高地帯では、ちょうど今頃(6月下旬~7月上旬)が開花最盛期なのですが、ミズバショウは通常、どちらかといえば北国の低標高地や海岸付近に多い、春に咲く植物です。

そして、なんとなく西洋的なイメージがありますが、ヨーロッパには分布していません。実際の分布地は、本州の東半部(西は兵庫県北部にも分布)とオホーツク海沿岸一帯(北海道・サハリン・千島列島・カムチャッカ半島・東シベリア)です。

ミズバショウ属には2種があります。日本で見られる白いミズバショウと、もう一種はアラスカから北米大陸西海岸北部にかけて生育する、黄色い花――正確には花序を覆う「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる部分――が鮮やかな「アメリカミズバショウ」。シアトルやバンクーバーといった北米大陸西海岸の都市の郊外では、ちょうど日本から移入れたソメイヨシノが満開になる頃によく見られる、春の野生植物のひとつです。

さらにもう一種、属こそ別に置かれていますが、ミズバショウとアメリカミズバショウの「祖先型」に近いと考えられる、花(仏炎苞)のない「ゴールデン・クラブ」という種も、北米大陸東岸部に分布しています。