〔PHOTO〕iStock
政治政策 メディア・マスコミ

7割が新人の保育所も…保育の規制緩和で犠牲になる子どもたち

真に現場で求められていることは?

保育現場を揺るがす“事件”

6月14日、国家戦略特別区域諮問会議で新たな保育の規制緩和について示された。

地域を限定し、保育士資格をもつ人材が確保できない場合でも保育所を作りやすくする特例を設け「地方裁量型認可以降施設(仮称)」の設置が認められるが、有資格者の配置が緩和されることへの懸念は大きい。

もともと認可保育所には、保育士の配置について子どもの年齢ごとに最低基準が設けられている。

0歳児では子ども3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児は「6対1」、3歳児は「20対1」、4~5歳児は「30対1」となる。

これは、あくまで最低基準で、戦後まもなく作られたもの。保育の質を守るため、配置基準の引き上げは長年に渡る課題となっている。

しかし、安倍晋三政権の下、待機児童対策が政策の目玉となって急ピッチで保育所が作られるなか、保育士確保が困難になり、配置基準の引き上げはタブー視されるようになった。

そればかりか、待機児童対策のためにこの特例が提案されたのだ。特区では、配置基準の6割以上が有資格者であれば認可保育所と同等の補助金が受けられることになる。5年間の時限措置とはいうものの、自治体の判断によっては延長が可能とされる。

保育現場からは「保育の質どころか園児の命の安全を守ることができるのか」と波紋を呼んでおり、保育現場を揺るがす“事件”が起こったと言っても過言ではないだろう。

〔PHOTO〕iStock

この規制緩和の過程では、2018年2月9日に、大阪府と大阪市から待機児童対策についてのヒアリング(国家戦略特区「提案に関するヒアリング」)が行われたことが影響した。

「大阪府・大阪市がめざす新たな保育人材の活用について」によれば、保育士は高い専門性があり、保育士の代替とするのではなく、保育士業務を分解して高い専門性が求められるもの以外の業務を保育支援員が協働。

3分の2は保育士を配置するため、質は維持できることとし保育支援員を基準数に入れるよう要望している。

その際、保育支援員は、ゆくゆくは保育士資格を取得することを目標としつつ、保育支援員1.5人で保育士1人に換算して人員配置すると提案していた。

大阪の提案を受けて厚生労働省が対応案を出す格好となった。

特区では、配置基準の6割以上は保育士という基準に緩和しつつ、待機児童解消までの時限措置として「地方裁量型認可移行施設」(仮称)を設置。

具体的な内容として、①保育士不足で運営が困難などの緊急的な場合に限り、認可保育園からの移行も可能、②「地方裁量型認可移行施設」にも、国の運営費の基準額にならって運営費を補助、③認可化移行の計画期間は5年間とし、自治体の判断で延長も可能、④保育事業者と利用者の直接契約、⑤保育の質の確保のため、指導・監査の実施や運営状況の見える化、都道府県の協議会による人材確保の実施・公表――となる。規制緩和派が従来から主張してきた、利用者との直接契約まで盛り込まれている。

 

保育大手の提案だとしても…

こうした提案は、過去にもされている。

2014年9月26日、国家戦略特区ワーキンググループでは、「提案に関するヒアリング」として、保育大手のポピンズから「特区における保育士・保育所制度に関する改革提案書」が出された。

東京都が先駆けて、配置基準の6割以上が保育士であればいいとする認証保育所を2001年から実施している。

同提案書では、「認可保育施設での保育士要件の7割化」が提案されている。基準の3割は保育士以外でいいというのだ。

さらに、議事録を見るとポピンズ社の中村紀子代表取締役会長は「認可保育所より、全て保育士でない認証保育所のほうが利用者からの満足度が高い」と言及さえしていた。