最大の懸念は、常識が通用しないトランプ大統領(photo by gettyimages)
金融・投資・マーケット

米中貿易紛争で懸念される「ボタンの掛け違い」という大惨事

一筋縄ではいかない相場環境

6月後半に入り、世界的にリスク回避的な動きが強まっている。その中で、円はドルに対してじり高の展開だ。FRB(連邦準備理事会)が金融引き締めを重視する考えを示しはしたが、日米金利差の拡大期待を理由にドルを買う動きは出づらくなっている。その原因は、米国と、中国および主要先進国間の貿易摩擦への懸念の高まりにある。

通商問題は、米国の選挙イヤーの恒例行事ではある。ただ今回は、米国のトップが世界経済の常識をわきまえないトランプ大統領だ。現実的に考えれば、全面的な衝突はできないはずだが、だからと言って想定外の展開もありうる。決め打ちはできない。米国がわが国に譲歩を求め、一段とリスク回避の動きが強まることもあるだろう。いずれにせよ、一筋縄ではいかない相場環境が続きそうだ。

 

懸念高まる「ボタンの掛け違い」

従来、市場参加者は、米国の中間選挙が終われば、米国と主要先進国間の貿易摩擦は徐々に解消に向かうと考えてきた。中間選挙での支持確保のためにトランプ大統領は成果を示したい。同時に、各国経済との相互依存度が高く、全面衝突もできない。そのため、米国は、鉄鋼など“オールドエコノミー”の分野でわが国やEUと鍔迫り合いを演じ、水面下で妥協点を探ると考えられてきた。

足許、市場参加者は先行きへの警戒感を高めつつある。米国も、欧州も、簡単には引き下がる気配を示さないからだ。特に、EU加盟国は、移民や難民問題をめぐって対立している。欧州委員会としては、摩擦回避のために米国に譲歩し、南欧や東欧諸国から「弱腰だ」と非難されることは避けたい。全面衝突はできないが、ハードな姿勢を取らざるを得ない。それが欧州委員会の本音だろう。

この状況は、“ボタンの掛け違い”のリスクを高める。米国とEUが報復の応酬合戦に向かうと、鉄鋼やアルミ以外の分野に影響が及ぶだろう。たとえば、米国が産業のすそ野が広い自動車への関税を賦課しようとするなら、影響が大きくなることは避けられない。加えて気がかりなのは、欧州委員会が中国に近づいていることだ。これは、事態を複雑化させる恐れがある。

中国と米国は覇権国を争っている。米国は中国の覇権強化を抑えたい。それがIT分野を中心とする対中制裁につながった。中間選挙後も米国と中国の摩擦は続く可能性がある。欧州が中国との関係を強化すれば、米国は欧州にもIT先端分野での制裁などを課すかもしれない。その懸念が高まれば、金融市場にはかなりの影響があるだろう。