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「金正恩カード」を手放さない習近平にトランプが繰り出す怒りの一手

未曾有の米中貿易戦争が始まる

今度ばかりは本気かもしれない

米国のトランプ大統領が中国と本格的な貿易戦争に踏み切る構えを見せている。中国は朝鮮半島をめぐる情勢の「陰の主役」だ。米中の緊張激化によって、朝鮮半島情勢も不透明になってきた。

トランプ氏は6月18日、総額2000億ドル相当の中国製品に対して10%の追加関税を検討する、と発表した。大統領は先に、総額500億ドル相当の25%追加関税を発表していたが、両者を合わせると2500億ドル規模になる。

米国の中国からの輸入総額は5055億ドル(2017年)なので、今回の措置はその半分弱に追加関税をかける内容だ。さらに、中国の対米投資に対する制限も検討している、という。これに対して、中国は直ちに包括的な措置で対抗する、と発表した。

中国の米国からの輸入総額は1299億ドル(同)なので、そのすべてに報復関税をかけたとしても、米国の2500億ドル規模には及ばない。その場合、米国からの対中投資やビジネス機会に制限をかけるのではないか、とみられている。

 

双方が実際に発動すれば、貿易から投資、ビジネス分野にまで制裁と報復の応酬になる。まさに前例のない米中貿易戦争だ。これを嫌気して世界の株価は下落したが、株価にとどまらず、いずれ実態経済に悪影響が及ぶのは避けられない。

はたして、トランプ氏はどこまで本気なのか。

6月8日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56015)で書いたように、トランプ流の交渉術は、基本的に「コワモテ(強面)」と「ヤサガタ(優形)」を1人2役で使い分ける点に大きな特徴がある。

まず、ビーンボールを投げて相手をのけぞらせておいてから、おもむろに優しい表情で本音の交渉に入るのだ。この手は北朝鮮との駆け引きで存分に発揮されたが、今回もそうだとすれば、中国が報復に乗り出すあたりから、本当の交渉になる可能性はある。

だが、そうとばかりは楽観できないかもしれない。というのは、すでに一度、この手を使っているからだ。5月25日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55817)で書いたように、ムニューシン財務長官は5月21日、米中協議の後、いったん対中制裁関税を棚上げした。

今回はムニューシン氏らの慎重論を押しのけて、大統領が筋金入りの対中強硬派であるナバロ大統領補佐官らの意見を受け入れ、追加関税を決めたとされる。そうだとすれば、交渉術としてのコワモテではなく、正真正銘の強硬路線かもしれない。

しかも重要なのは、前回の棚上げ決定には朝鮮半島情勢が深く関わっていた点である。5月25日公開コラムで書いたように、500億ドルの追加関税を棚上げしたのは、北朝鮮の核とミサイルをめぐる米朝交渉で、中国を敵に回したくなかったからだ。

北朝鮮は米朝首脳会談を自ら求めておきながら、5月7~8日に中国・大連で開かれた2回目の米朝首脳会談の後、にわかに強気になって米国批判を始めた。金桂寛(キム・ゲグァン)第1外務次官が同16日、談話で首脳会談を「再考する」可能性に触れたかと思えば、米韓合同軍事演習についても「無礼な挑発」と批判した。

正恩氏がなぜ強気になったかといえば、習氏が米国の追加関税をけん制するために、金正恩朝鮮労働党委員長に対して「米国には強気で臨め」とそそのかした可能性がある。

北朝鮮が強気で対応すれば、習氏は「北朝鮮を抑えるにはオレの協力が必要だぞ」と米国に自分を高く売りつけられるからだ。その結果、米国はいったん対中制裁関税を棚上げせざるを得なくなったのだ。

トランプ政権は結局、棚上げを決めたが、大統領は同22日、米韓首脳会談後の記者会見で、中国の習近平国家主席について「グローバルクラスのポーカー・プレーヤー」と評した。交渉の巧みさを認めざるを得なかった。

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