photo by gettyimages
政治政策 防衛・安全保障 国際・外交

日本の報道ではわからない、トランプ大統領の「真の野望」が見えた

現地取材で初めてわかること

なにかと世界を騒がせるトランプ大統領。日本の報道では、そのキャラクター性ばかりが強調されてしまい、その人物的本質がなかなか見えない。この度『トランプ王国の素顔』を上梓した元NHK記者の立岩陽一郎氏が、その真の野望に迫る――。

誤訳されたトランプ発言

どうしても高揚感を抑え切れない様子だった。

6月12日にシンガポールで行われた史上初の米朝首脳会談。金正恩朝鮮労働党委員長との共同声明に署名した後、記者会見に臨んだドナルド・トランプ米大統領の姿は、興奮の余韻がいつまでも冷めやらぬ、という雰囲気だった。

「金委員長は非常に有能な人物だ」
「“戦争ゲーム”をやめれば莫大な金を節約できる」
「適切な時期に平壌を訪問したい。金委員長もホワイトハウスに招待したい」

……などなど、疲れを忘れたかのように饒舌に話し続ける。

途中、傍らに控えるサラ・サンダース広報官に、「もう(会見を)やめた方がいいのか? ノー、俺はいつまでも大丈夫だ」と笑いながら声をかける。上機嫌なことこの上ない。

 

気持ちが高ぶるのも無理もないだろう。ふだんは大統領に批判的なCNNテレビでさえ「歴史的な会談」と評し、大取材団に加えて、アンダーソン・クーパーやクリスチャン・アマンプールといった名物キャスターをシンガポールに派遣して、華々しく報道したのだ。

いつもホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領は、「この人殺しのテレビ記者ども」などと口にして、メディアへの敵対姿勢を前面に出すことも珍しくない。ところが、米朝首脳会談後の会見ではそういった攻撃的な言動は一切なかった。

ホワイトハウス担当の記者の名前を連呼し、「どこにいるんだ? 照明が多くてこっちからはよく見えないよ」などとおどけてみせる。そして次々と記者たちを指名して、てきぱきと質問に答えていく。

会見でのトランプ大統領(photo by iStock)

その中で、日本人拉致問題に関する質問が出た(日本のメディアからの質問はこれだけだったと思う)。トランプは次のように答えた。

「拉致問題は、非核化と共に、日本の安倍首相が最も重要と考えている問題だ。もちろん、首脳会談で取り上げた。共同声明には盛り込まれていないが、今後、取り組まれる」

疑問を感じたのは、日本の一部のメディアが、最後の「今後取り組まれる」のくだりを「うまく行くだろう」と訳して報じたことだ。これは誤訳だと私は思う。

何度も確認したが、トランプ大統領が言っているのは、「It will be worked on(取り組まれる)」 であって、「It will be worked out(うまく行くだろう)」ではない。

また、「今後北朝鮮は取り組んで行くだろう」として、あたかも、拉致問題に取り組む主体が北朝鮮だとトランプが言ったかのように報じたメディアもあった。しかし、それはあくまで見通しでしかない。