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「発達障害」の妻が何を言いたいのかわからない

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【5】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第5回です。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

サザエさんはPMS

先に言うと、ハッキリ言ってお妻様との会話は楽しい。

大人の発達障害さんであるお妻様の旺盛すぎる好奇心は、眼に入る自然とか生き物とか、江戸の風俗史とか世界の魔境とかなんとか、いつだって現実的な家庭運営とか業務なんかとは別の方に広がっていて、毎日毎日、発見や学んだことの報告を僕に投げかけてきてくれる。細かい無駄知識も豊富で、こちらも勉強になることが多いし、つまらない定型発達さんの僕が仕事や家事のことばかり考えているのに比べると、本当に「豊か」なのはお妻様たち不定形さんなんだと、常々思うぐらいだ。

ちなみにこうして原稿を書いている前日の名言は、

「サザエさんがカツオぶっ叩いてるときは、PMS(月経前症候群)なんだな」

おお。その解釈は日本初じゃないか? 

こうして日々お妻様名言(迷言)録を更新していくのは、彼女と暮らしている僕のひそかな楽しみだ。

良くも悪くも天然。かつてお妻様が脳にできた60㎜以上の悪性脳腫瘍の摘出手術を受けたときは、何よりも生き延びることを願うと同じくらい、そのパーソナリティが失われてしまわないよう強く願った。

けれどそれでも、不定形お妻様。やっぱり我が家のお困りごとの上位には「話が通じない」が君臨している。お妻様の言いたいことが分からない。こちらの言うことがお妻様に伝わらない。

今回はこの会話困難について掘り下げようと思うが、まずは前者、お妻様がなにを言いたいのか理解できないの方から攻めてみよう。

前述したように、お妻様の話を聞いているのは面白いが、それは聞き流しているときだったり、僕に興味のある話題の場合で、そうではないケースでお妻様の話を正確に理解しようとし始めると、とたんに難易度が上がる。

そういえば先日、お妻様が僕のまだ観ていない劇場版ドラえもんを観ていたので、試しにその内容をお妻様に聞いてみることにしよう。

※(以下、ほぼ会話そのままのリアル再現です・読者様には不快に感じられたら申し訳ない)

「で、お妻様、昨日夜中に観てたドラえもん、どんなだった?」

「ネイルが剥がれちゃったから、寝るの遅れたゴメン」

しょっぱなから食い違うが、これは「僕の話がお妻様に伝わらない」なので、次回のネタ。気を取り直して、

「じゃなくて、寝たのが朝だったのはいいから、ドラえもんはどうだった?」

「ああ、南海大冒険な。ねじまき都市と宇宙漂流記の間の作品。声優はまだ昔のまま」

いやいや、その無駄に突出した記憶力はおいといおて、さっさと内容教えてくださいよお妻様。

「内容な。宝探しをしたいのね。で、宝箱の道具が出るって宝の地図を出したのね。ドラえもんの道具だから、だからピンポイントでしか出ない。指してもそこじゃなかったら出ないのね、宝の地図の。なんだけど、のび太君一発で当てちゃったので、5人で冒険するの、南の島の」

「お妻様……全然わからんよ」

「あ、前置き忘れちゃった。図書館で夏休みのグループ課題をやるのね。お決まりの四人でやってて、それでのび太君だけが海のことを調べてるから、みんな海の生き物とか深海とか調べるのなんだけど、のび太君はのび太君で宝島?海賊の宝とか調べるのね。それでいつも通りスネ夫とジャイアンに怒られてドラえも~んで、てれれれれれてれれれれれてれれれれれてれれれ♪(オープニング曲)」

歌わないで(涙)。

 

僕が求めているのは、今回の設定が「海賊の宝探し」だとして、どんな敵が現れてどんな仲間ができて、どんなピンチがあって最後宝は手に入るのかみたいな、ざっくりしたあらすじなのだけど、

「とりあえず宝探しなのね? で、最後に宝は手に入るの?」

「??」

「宝はなんだったの?」

「友達? いや、のび太君たちは宝は手に入らなくて、途中で出てくる海賊島に住んでる子は宝が見つかるんだけど」

「そうか……じゃあ、あと今回の敵とか、大事な出来事みたいのは?」

「劇中の挿入歌が武田鉄矢ではないぞ。えーと誰だっけ」

うーむ、それは物語にまるで関係ないし、挿入歌を誰が歌ってるか調べ始めなくていいから! けれどもああ、いつものお妻様だなあという感じ。

これが平常である。いやほんと。わかんないよ。

分かんないけれども実は、今回のこの会話はお妻様の話の中では比較的分りやすい部類。

少なくとも僕の側にも登場人物のドラえもん+4人とその人間関係や毎度似たような展開をするという予備知識を持ち合わせているからまだいいものの、そうでない場合は冒頭の「宝探しをしたいのね」の段階で「誰が?」となるし、いざその「誰」の説明が始まると、その「誰」役をやっている俳優のそれまでの出演作とか、演じる声優のこととか話が延々と続き(彼女もわからなければグーグル開いて調べ出し)、結局その役の人物が社長なのか研究者なのか子どもなのか侵略者なのかもわからない。