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不正・事件・犯罪 週刊現代

新幹線殺傷事件の被害者・梅田耕太郎さんの無念を思う

本当に立派な方でした

自らの命を犠牲に、刃物を振り回す男から乗客2人の命を救った梅田耕太郎さん。勇気ある行動をとった彼の半生を振り返りたい。元同僚や同級生が明かした、知られざるエピソードを紹介する。

刺されても立ち向かった

「梅田君は、普段は大人しくて穏やかですが、困っている人を見ると、積極的に手を差し伸べてくれる人でした。今回の彼の行動も、考えるよりも先に身体が反応したのかもしれません」

東京大学大学院でともに学んだ友人は、そう語った。

6月9日夜、会社員・梅田耕太郎さん(享年38)が、搬送された小田原市内の病院で亡くなった。

司法解剖の結果、死因は失血死。身体には胸や肩をはじめ約60ヵ所の傷があった。致命傷となった首には約18cmの切り傷があり、なたで切られたとみられている。

 

一人の男性の命が犠牲となった、この凄惨な事件を振り返る――。

同日午後9時42分。東海道新幹線「のぞみ265号」は、ダイヤ通りに新横浜駅を出発した。

外資系の化学メーカーBASFジャパンに勤める梅田さんは、乗車すると最後列の通路側の席に腰を下ろした。横浜で2日間の社内研修を終えて、兵庫県尼崎市の自宅への帰途についたところだ。しかし、ひと息つく間もなく事件は起こる。

「逃げて逃げて!」

午後9時45分ごろ、車内に叫び声が響いた。

梅田さんの2列前に座っていた小島一朗容疑者(22歳)が、無言で立ちあがり、右側に座る女性をなたで切りつけたのだ。

突然の出来事に、車内は大パニック。恐怖に震えた乗客は、猛ダッシュで隣の車両へと急いだ。それを横目に、決死の行動で男に立ち向かったのが、梅田さんだった。

梅田さんは、加害者の背後から気づかれないように近づいた。身長180cm弱の彼は、小島を後ろから抑えて動きを制止。その隙に、女性は肩から血を流しながらも後方に逃げることができた。

その後、梅田さんは刃物を持った小島と激しくもみ合って転倒。すると、小島は迷うことなく、通路を挟んで左隣に座る女性に襲いかかった。

倒れていた梅田さんは、すぐに立ち上がり、男の凶行から女性を守るべく、再び止めに入った。

もう一人の女性を後方へ避難させた梅田さんに、小島は刃物で容赦なく襲いかかった。はじめは応戦していた梅田さんだったが、馬乗りになった小島に切りつけられていくうちに、途中で動かなくなってしまう。

午後10時ごろ、臨時停車した車両に警察官が駆け付けると、無表情の小島は抵抗する素振りも見せず、現行犯逮捕。通路の床一面は血の海で、事件の惨状を物語っていた。

自らの命をなげうって、見ず知らずの乗客2名を救った梅田さん。彼の勇気ある行動は、誰にでも真似できるものではない。38歳という若さで凶刃に倒れた梅田さんは、どんな人生を歩んできたのだろうか。