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重要選挙でまたしても出てきた「福島に住んではいけない」というウソ

脱原発を訴える人こそ、正しい情報を

7年が過ぎても、また…

新潟県の米山隆一前県知事が辞任したことに伴い、6月10日に県知事選挙が行われました。新潟県は運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発を擁していることもあり、選挙運動では原発の是非についての言及も数多く見られました。

2011年に起こった東電福島第一原発事故の被害は甚大でした。しかし、「被曝」についての科学的な問題だけならば、すでに何年も前から、福島県内の避難区域外の地域で普通に生活することにより、他の地域と比べて健康リスクが高くなるとは言えないことが明らかになっています。幸いなことに、放射線被曝そのものを原因とした健康被害も報告されていません。

ところが新潟県知事選挙の舌戦の中で、反原発を訴える人々の一部からは、未だに福島に対する「誤った認識」にもとづく発言が飛び出したのです。

6月2日に新潟市内で行われた野党推薦候補・池田ちかこ氏の応援演説では、福島県からの自主避難者で「市民の思いをつなぐ会」共同代表の磯貝潤子氏が演説中に、
「娘たちが鼻血を出して、それでもなんとか生きていこうという姿に、ここ(福島)にいちゃいけない、そう思って新潟に来ました」(https://www.youtube.com/watch?v=OiFLjJmmicM&feature=youtu.be)と発言しました。

磯貝氏の発言からは、「東電原発事故による放射能の被害が原因で、子どもたちが鼻血を出した。そのような土地である福島に住むことは間違っている」というメッセージを読み取ることが出来ます。詳しくは後述しますが、当然ながら福島第一原発事故と「鼻血」の関連性は、科学的裏付けがない「誤り」であることが判明しています。

この発言に対して周囲の支持者からの訂正や指摘は無く、その後「池田ちかこサポーターズ」のTwitterアカウント(@ikedasupporters)によって文字おこしが発信された他、立憲民主党公式アカウントによる拡散、YouTubeでの動画配信も行われましたが、この際にも当該発言の誤りについての言及はありませんでした。

その後、ツイッターでは文字おこしされた内容への批判が集まり「炎上」しました。当該ツイートは後に削除されましたが、削除理由の説明や誤った情報を拡散したことへの謝罪・訂正の動きなどは現在までありません。

そもそも「重い被曝」をしていないのに

「福島では、被曝によって鼻血が出る」との言説が大きな話題になったきっかけは、2014年春に発表された、反差別を訴える団体「のりこえねっと」共同代表であり漫画家の雁屋哲氏による漫画作品『美味しんぼ・福島の真実編』でした。

雁屋氏は作中で、登場人物に「私は一人の人間として、福島の人たちに、危ないところから逃げる勇気を持ってほしいと言いたいのだ」「(自分達にできることは)福島を出たいという人たちに対して全力を挙げて協力することだ」などと言い切らせています。これは雁屋氏自身が「福島は人が住むべきところではない」と考えている、と受け止められてもおかしくない表現です(https://www.huffingtonpost.jp/2014/05/18/oishinbo-fukushima_n_5349422.html)。

こうした描写への批判が集まると、雁屋氏はさらに自身のブログで「(今後はもっとはっきりしたことを言っていくので)鼻血ごときで騒いでいる人たちは、発狂するかも知れない」「私は真実しか書けない」とまで述べています。

 

しかしながら、もし本当に「被曝を原因として鼻血が出た」人がいたとすれば、臨床症状が現れるレベルの大量被曝をした場合しかあり得ません。この場合、鼻以外の身体中の粘膜から出血が起こり、止まらなくなっているはずで、命を落とすほどのリスクにさらされている状態です(参考:「PET検査ネット がん検査と放射線について」)。

東電原発事故では、事故直後に緊急対応をした作業員でさえ、250mSv超の被曝をした人は6人に留まっていますが、これだけ高い数値でも、直接被曝を原因とした鼻血などの症状が出るには遠く及ばない被曝線量です。

一般の廃炉作業員にいたっては、美味しんぼの鼻血問題が提起された2014年時点では、4月から10月まで7ヵ月間の累積被曝線量の作業員平均は3.42mSv (3,420μSv)でした。被曝による健康被害を起こすには程遠い、ケタ違いに低い線量しか受けていません(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000070370.pdf)。

では、福島に暮らす一般的な人々の被曝量はどの程度なのでしょうか。