清水寺の本堂〔PHOTO〕iStock
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世界遺産の寺社で次々「拝観料値上げ」が起こる複雑な事情

財源確保の問題だけではない

古くて新しい「拝観料値上げ」問題

世界遺産登録された寺社を中心に拝観料が値上げされている。

先月、毎日新聞が報じたところでは、東大寺大仏殿が500円から600円、興福寺国宝館が600円から700円、法隆寺の共通拝観料が1000円から1500円、延暦寺が550円から700円、清水寺が300円から400円といった具合である。

拝観料は旅行者には悩ましい。京都や奈良での寺社めぐりは定番だが、いくつもまわれば、拝観料だけで数千円になる。

もちろん、檀家を持たない寺院にとって拝観料は経営に不可欠の財源だ。各寺社が擁する文化財の保存にも金がかかるし、観光客増加にともない、さらなる設備維持も必要になってくる。

拝観料は難しい。果たしていくらが妥当なのかという基準がなく、さらに宗教的な寄付なのか世俗的な入場料なのかもはっきりしない。

単に財布の問題ではなく、宗教的実践とは何かという問題ともつながっているのだ。

そして拝観料は、日本が近代化を果たした明治期以降、繰り返し問題になってきた。

東大寺大仏殿〔PHOTO〕iStock

戦前戦後の拝観料

三十三間堂は、南北120メートルもの巨大なお堂の中に1000体もの仏像が安置される京都を代表する寺院だ。

今から100年以上前の1907年、三十三間堂を訪れると、まず入口で拝観料として4銭が徴収される。

だが、堂内を一回りする間、2〜3ヵ所で「寄付金」が募集されており、いくらか出さないと通りにくい雰囲気であるため、最終的に10〜15銭を払うことになる。

当時、蕎麦やうどんが1杯3銭程度であったから、その3倍から5倍程度だ。単純な比較は難しいが、今でいえば1500円くらいの感じだろうか。

 

1939年に宗教団体法が成立するまで、近代日本には統一的な宗教法規は存在しなかった。たびたび案は出されたが、調整がつかなかったのだ。

1926年頃にも宗教法の制定が検討された。その際、最大の懸案事項の一つとなったのが「宗教団体の営利事業禁止」であった。

仮にこの法律が成立していれば、奈良大仏、三十三間堂、金閣寺、増上寺、比叡山根本中堂の拝観料をはじめ、秘仏や宝物の拝観料、さらに庫裏などの間貸しが規制される見込みであった。拝観料は世俗的な入場料ととらえられていたようだ。