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ドイツで一番のエリート紙がやらかした「言論事件」その深層

漂流するドイツの「表現の自由」

南ドイツ新聞のカリカチュア

去る5月半ばのこと、『南ドイツ新聞』が、自社ですでに何十年もカリカチュアを書いていた作家と決別した。

南ドイツ新聞はミュンヘンに本社を置く新聞社で、ドイツでは高級紙の一つ。国内最大の売り上げ部数を誇る。論調はドイツのメイン・メディアの例に漏れず、かなり左寄りだ。ちなみに、一昨年、パナマ文書をスクープしたのもこの新聞社だった。

ずいぶん前だが、南ドイツ新聞が購読者に無料で配っている付録雑誌で、日本の皇室の特集を組んだ際、信じられないような下劣な表現で、皇太子ご夫妻にお子様ができないことを愚弄したことがあった。

 

それは、皇太子殿下のみならず、日本に対する侮辱と解釈され、在独日本大使や、欧州局長などが、同紙、およびドイツ政府に対して抗議するに至った。しかし、南ドイツ新聞に反省の色はなく、その後も彼らの報道は、時と場合によってしばしば歪む。

とくに日本に関しての記事では歪み方が甚だしく、東京特派員は、何か日本に恨みでもあるのではないかと思うほどだ。

たとえば竹島については、「日本が韓国から島を譲り受ける可能性はない」。竹島は日本が奪い取ったものではないはずだが、「独島をめぐる不和は日本の植民地支配に遡り」、「日本政府は、それを今も反省をしていない」というのが、南ドイツ新聞の見解だ。

そのうえ日本人は、「20万人の韓国女性を慰安婦としたことも悔い改めていない」とし、2014年、朝日新聞が自社の慰安婦報道を訂正した際には、「首相vs.新聞」というタイトル、「日本の首相は自分に批判的な朝日新聞を厄介払いするつもり」というサブタイトルで記事を書いた。

繰り返すが、この新聞が、ドイツで一番売上の多い、エリートの読んでいる新聞なのだ。

南ドイツ新聞〔PHOTO〕wikipedia

時は流れて2009年、長崎県の軍艦島が世界遺産の候補としてリストアップされた。軍艦島は海底炭鉱の基地で、戦前、戦後と良質の石炭を出し、日本の産業の発展に寄与した。今、当時の面影を残したまま朽ち果てた巨大な建物群は、遺跡のようで興味深い。

ただ、それを聞いた韓国がすぐに、朝鮮人が強制労働をさせられた「地獄島」が世界遺産とはけしからんと、世界中で反対運動を始めた。

「朝鮮人労働者が、強制的に移住させられ、自由も賃金もなく、日本人が行わない過酷な労働に従事させられ、虐殺された」という主張だが、彼らが証拠として使っている写真に写っているのは、どれも日本人鉱員だった。そのうえ、海底深くでの採掘には高度な技術が必要なので、肝心の危険な仕事は日本人技術者がやっていたという。

ところが、韓国の訴えを真に受けた南ドイツ新聞は、それをそのまま書いた(2015年7月)。それに対し、旧島民やその子孫で作った「真実の歴史を追求する端島島民の会」が抗議したが、返ってきた答えは、「記事をチェックしたが、訂正はしないと決めました」。検証も訂正もしないというのは、報道機関としては失格ではないか。

南ドイツ新聞の特派員は、日本人はドイツ語の新聞など読まないと思っているのかもしれないが、在独の日本人で不愉快に思っているのは私だけではない。もっとも、自分は南ドイツ新聞を読んでいるドイツのエリートの仲間であると自負している反日日本人もいるかもしれないが…。

そうこうするうちに、2017年7月には、韓国で「軍艦島」というフィクション映画が作られた。戦時中、軍艦島で虐げられた朝鮮人が日本人と戦い、島を脱出するという筋だが、見ているうちに本当だと思う人も出かねない。

予告編を見たら、残酷なシーンばかりで辟易したが、これがなんと去年のスペインの映画祭でオービア部門の最優秀作品賞を取ったというから愕然。こちらもまもなく性奴隷とともに、史実として一人歩きしそうだ。

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