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金正恩氏をどう「利用する」のか…トランプの狙いが見えてきた

やっぱり眼中にあるのは、あの国だった
安達 誠司 プロフィール

今後のポイントは

このような筆者の勝手な視点で今回の米朝首脳会談をみた上で、筆者が考える今後注意すべきポイントをいくつか挙げたい。

第一点は、韓国の存在である。

今回のトランプ大統領の比較的「大人な」対応(もっとも、直前には中止を示唆するなど「ディール」を駆使したが)は、本来はアメリカの同盟国であるはずの韓国が親北朝鮮政権となったことで、同盟国の役割を果たせなくなっているためではないかと考える。

筆者が考えるに、北朝鮮にいいようにあしらわれている感もある。韓国がアメリカの同盟国として中国に接していれば、もう少し北朝鮮に対して強硬な姿勢(すぐにでも具体策を要請する)を示せたのではなかろうか。北朝鮮に対して、「鞭」だけを振るい続け、北朝鮮が中国サイドに逃げ込めば、東アジアの安全保障体制は大きく揺らぐ懸念がある。

「体制維持」と「将来の米韓合同演習の停止」という「アメ」を握らせる必要が出てきたのは、同盟国としての役割を果たせなくなりつつある韓国の存在ゆえではなかっただろうか。

 

以前の当コラムでも言及したが、文在寅政権は、典型的な「ダメなリベラル」的な経済政策を採用しているため、韓国経済がじわじわと低迷してきている。文在寅政権はこの失地を北との宥和政策で取り戻そうとしているのかもしれないが、ますます国民生活が脅かされる状況になれば、文在寅政権の存在基盤は危うくなる可能性が高い。

この状況下で、トランプ大統領は韓国に対しどのようなディールを仕掛けてくるのであろうか(北朝鮮にさらなる「アメ」を与え、中国との関係にクサビを打ち込んだ上で、韓国に対し、北朝鮮の経済開発支援を強く要求するなど)。また、文在寅政権は、本格的に韓国経済が停滞し始めた場合に、現状の政策を続けるのか否か、韓国の出方は非常に興味深い。

第二点は、ロシアの存在である。

今回の米朝首脳会談前に、キム委員長は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した。筆者はロシア(のプーチン大統領)が何を考えているのかがよくわからないし、トランプ大統領との関係性もいいのか悪いのかよくわからない。

だが、トランプ政権は、中国との関係を深めている欧州(特にドイツ)のことを快く思っていないとすれば、かつては旧ソ連圏であった東欧諸国を事実上、EUにとられ、かつ、ウクライナなどの旧ソ連圏諸国もEU寄りになり、ユーラシア大陸でのプレゼンスが後退しつつあるロシアは、「使える国」ではなかろうか(また、ロシアが中国とは友好な関係を築こうとしているとも思えない)。

ロシアのGDP成長率はほぼエネルギー価格と連動している。アメリカはシェールガスの輸出を解禁したが、このシェールガスの産出・及び輸出を通じて、エネルギー価格の動向に影響を与えることも可能になっていると考える。これを対ロシアの「ディール」に使うのであれば、ロシアを通じて、親中度を高めるEUを牽制できるかもしれない。

* * *

ところで、日本は、アメリカの北朝鮮に対する「ムチ」的な政策に対応し、強い圧力をかけることに協力してきた。従って、今回の米朝首脳会談におけるトランプ大統領の姿勢の変化にどのように対応していくのかが気になる。

日本の場合、拉致問題という特別な事情を抱えている。北朝鮮(そしてアメリカも)はこの拉致問題を交渉カードにするかもしれない(例えば、経済開発支援など)。

安倍政権がこれにどう対応するかはわからないが、拉致被害者のご家族は高齢化しており、時間が限られている。一刻も早い拉致被害者の帰国を実現していただきたい。

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