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米朝会談 「合意文書」はこう読めばすべてが理解できる

国際政治学者が分析する

歴史的な米朝会談が終わった

歴史的なシンガポールの米朝会談が終わった。大成功だった、というトランプ大統領の言葉は虚勢ではないだろう。

中身はまだ空虚であったとしても、最初の会談でなされるべきことはなされた、という印象は受ける。つまり「取引(Deal)」の基本構図の確定である。

合意文書調印後に一人で臨んだ広大な部屋での記者会見で、「こんなに沢山いたら落ち着かないなあ」と冒頭でジョークを言っていたトランプ大統領は、時間を延長し続け、一時間以上にわたって質問に答え続けた。

まさに独演会と言ってよかったが、その晴れやかな表情と、軽快な語り口に、大統領自身が誰よりも会談に満足していることがうかがわれた。

 

「取引」をする会談はもっと早く開催されるべきだった、と繰り返し述べたトランプ大統領は、前任の大統領たちが成し遂げることができなかったことを自分だけが行えた、ということを強調した。

実際、金正恩氏に会うことだけでも、トランプ以外の誰もやろうとはしなかったことだ。

一度は会談をキャンセルする内容を示した5月24日のトランプ大統領の書簡は、敵対的な態度をとる相手なら、「取引」を話し合う交渉相手とは認めない、という姿勢であった。

しかし北朝鮮が即座にトランプ大統領に敬意を表して会談を懇願したため、トランプ大統領は、金正恩氏を「取引」相手として認めた。そしてトランプ大統領独壇場の会談で「取引」の基本構図が確認された。それが今回の会談のすべてであろう。

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「取引」の基本構図

今回の会談の論点は、アメリカが北朝鮮に「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)」を求め、北朝鮮は「体制保証」を求める、というものだった。

つまり「CVID」と引き換えに、「体制保証」が果たされれば、「取引」が成立する、というのが、基本構図であった。

ある意味で非常にわかりやすい仕組みなのだが、だからといって簡単に話がまとまるものではなかった。

アメリカ側から見てみよう。

「CVID」の要求は、北朝鮮の不当な核開発の結果として主張せざるをえなくなったものである。国連安全保障理事会が制裁を課しているように、国際社会の非難もまとまっている。

原則として、一切の対価は払えない。もし対価があったら、それを求める第二、第三の北朝鮮が現れ、核不拡散体制はかえって深刻な危機に陥る。

非核化も重要だが、核開発国が得をすることはなく、制裁によって損をしているだけの状態を維持しておかなければならない。

つまり本来、「CVID」は、「取引」材料にしてはいけないものであった。

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