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医師は「治療=薬を出すこと」と洗脳されている

私的「減薬・断薬」放浪記【5】

ノンフィクション作家の上原善広さん、実は長年に渡り心療内科に通い、大量に服薬していました。しかし一向に症状は改善せず、服薬を続けることに疑問を抱き"減薬・断薬"を決意。本連載ではその一部始終をお届けします。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/yoshihirouehara

「引く治療」を実践

まずは私の主治医である「はるの・こころみクリニック」の田島治医師に、なぜ減薬療法をするようになったのかを尋ねてみた。

「私自身は薬理学を専門としていましたが、90年代から新薬の開発に関わってきました。実際に患者さんの診察をしながら、治験に参加して新薬の効果を調べることなどもしてきました。減薬について具体的に考えるようになったのは、1997年のシンポジウムで、イギリスのヒーリー先生を呼んだことがきっかけでした」

ディビット・ヒーリーはイギリスの精神薬理学、つまり田島医師と同じく精神薬を専門とする研究者で、精神薬の乱用について早い時期から批判を展開、『抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟』、『ファルマゲドン――背信の医薬』(以上、みすず書房)などが邦訳されている。田島医師は、ヒーリー教授との出会いをきっかけに、彼の著書の翻訳、監修などに携わるようになる。

「私も新薬の開発に関わっていたのですが、99年に新薬SSRIが出た翌年あたりから、患者さんがすごく増えるようになりました。他の医師たちから疑問の声が出始めていたこともあり、薬のマイナス面に気がつくようになったのです。それからは薬を引く治療をする人のサポートをしたい、人生を救いたいと思うようになったのです」

田島医師は薬の専門家として、その使用方法に問題があると考え、「引く治療」を実践するようになる。

「最近も、小さい頃からうつの薬を飲み続けている40代の男性が来られましたが、大学病院で減薬に取り組んでいたら足の痺れがひどくて歩けなくなり、車イスで来られました。またパニック症状でSSRIを十数年のんできた30代の女性の場合は、そろそろ減薬しようとしたら、体の痺れがつらい状態が半年続いたので来院しました。この方の場合は一旦、薬を戻しました。そしたら症状が良くなったので、そこから改めて引く治療を開始しました」

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田島医師の元には、全国から減薬・断薬をしたい患者さんが来院している。

「減薬に失敗して駆け込む方が多いのですが、減薬するときは決して計画的でなく、自分の調子を見ながら柔軟な姿勢で、慎重に減らすことが大切です」

田島医師がNHKで取り上げられた約10年前と比べて、現在の状況はどう変化したのだろうか。

「現在は、確実に減薬ブームになりました。長年、薬を飲んでいる人が多くいて、そろそろ減薬したいと思うようになったのでしょう。薬を出すのはいいけども、医師は減らすことについては曖昧です。患者さんの中にも、減らしたいと言うと怒ってしまう人もいるし、逆に早く減らしすぎて激しい離脱症状を起こしたりしています。しかし一生、薬を飲まなければいけない人はごく一部。少量でも、長期にわたって飲むと脳の働きがおかしくなるので、精神科の薬はもっと慎重に出すべきです」

 

なぜ精神科や心療内科は、このような事態になってしまったのだろうか。

「薬のユーザーというのは、実質は患者さんではなくて医師になるのです。製薬会社も医師に宣伝しますからね。製薬会社はエビデンス(科学的根拠)を元にガイドラインを作りますが、これが医師に対しては一番のマーケティング・ツールになっています。しかし治験のデータは非公開が多く、このあたりも不透明です。睡眠薬、抗不安薬を減らすガイドラインもありますが、うまくいっていないのが現状です。

私も当初は製薬会社から『先生はサイエントロジー(精神薬を否定する新宗教)ですか?』と聞かれたり、他の医師から変なレッテルを張られたりしました。しかし医師は、薬を出すからには患者さんに対する責任があります。だから止めるときもラストまで責任をもつべきです。特に精神科の薬とは切れた方がいいと思っています」

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