企業・経営

TBSが英国の「モノ言う株主」に突きつけられた、痛すぎる提案

背景には複雑な事情が‥‥
磯山 友幸 プロフィール

これまでのコーポレートガバナンス・コードでは、「政策保有に関する方針を開示すべき」とだけ規定していたが、これを「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべき」とし、持ち合いを縮小することを公式に求めたのである。

また、従来は「中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべき」としていたものを、一段と踏み込んだ規定に変えた。改定版の原則にはこう書かれている。

「個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである」

つまり、株主が納得できるメリットが説明できないなら、持ち合い株は保有できない、としているのだ。

もちろん、コーポレートガバナンス・コードに盛り込まれた原則すべてに上場企業は遵守しなければならないワケではない。「コンプライ・オア・エクスプレイン」という欧米流のルールで、遵守できない場合にはその理由を説明すれば良いとされる。

もっとも、持ち合い株に経済合理性があるか説明せよ、という原則が守れない理由を述べることは困難とみられ、実際には遵守する以外に道はない。

 

日本的な「持ち合い」を説明できるか

このコーポレートガバナンス・コードに従ってTBSは東京エレクトロン株を保有し続けている理由を説明することになる。保有する770万株の時価はざっと1600億円。これを事業投資に回さず、株式として保有し続けている合理性を説明しなければならないわけだ。

総会招集通知でTBSHDは、株主提案には反対だとして、その理由を記載している。東京エレクトロン株は「投資の原資」として有効に活用している、としたうえで、現物配当した場合、180億円にのぼる課税を受けることになり、株主にとっても会社にとっても「共同の利益を損なうことは明らか」としている。

もっとも、銀行など既存のTBSHDの大株主も、英ファンドの株主提案をムゲにできない「事情」がある。

生命保険会社や年金基金、信託銀行などの機関投資家は保険契約者や顧客などにとってどちらが利益をもたらすかを検討し、議決権を行使しなければならない。スチュワードシップ・コードという機関投資家の行動規範が示され、行動を縛られるようになったのだ。

つまり、英ファンドの提案どおり、東京エレクトロン株をもらうのがよいか、TBSHDにこれまで通り東京エレクトロン株を保有させておいた方がよいか、最終受益者の立場に立って判断することを迫られる。無条件にTBSHDの経営者に与するわけにはいかないのである。

日本企業の間でも、政策保有株を売却し持ち合いを解消する動きが広がっている。痛いところを付いてきた英ファンドの提案がどんな結果になるのか。TBSHDの株主総会も集中日である6月28日に開かれる。

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