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週刊現代

思いつきだけで物を言う「勘違いした人」にはこう対処せよ

同調圧力を華麗にかわす

「勉強するとキモくなる」のウソ

千葉雅也氏(1978年生まれ、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授)の『勉強の哲学』(文藝春秋、2017年)は、21世紀の『学問のすすめ』という性格を帯びた優れた作品だ。ロングセラーになっている。

メイキング・オブ・勉強の哲学』は、『勉強の哲学』の製作過程とこの作品を書いた意図について詳しく記したユニークな書だ。

千葉氏の頭の中を見えるようにした作品と言ってもいい。評者のように文書を綴ることを仕事にしている者にとっては、メモの技法やプロット(筋書き)の作成についても参考になる事柄が多々含まれている。

親は子どもに勉強をしろというが、それは成績を上げ、難関校に入学すると、安定する将来が保証されると考えているからである。いわば勉強を立身出世の手段と考えているのだ。

しかし、高等教育レベルで本格的な勉強をし、学知を身につけると、世間の常識とは異なる思考をするようになり、当然、行動も変わってくる。

 

大多数の親は、子どもが変人になることは望んでいない。それだから、一生懸命に勉強する大学生に対する親の姿勢は「勉強はそこそこでいい。もっと社会の現実に親しんだ方がいい」というようなものになる。

このような俗物的圧力を巧みにかわして、真の学知を得る技法を千葉氏は伝授している。この技法がアイロニーとユーモアだ。少し長くなるが、重要な部分なので正確に引用しておく。

〈同調圧力の強い日本では、「出る杭は打たれる」と言われるように、自分独自の考えを持ったり、批判意識を持つと、周囲のノリからズレてしまうということがよくあります。

しかし、勉強するというのはつまり、そうしたズレを生きることなのです。

この本ではそれを「浮く」とか、周囲から見て「キモく」なると表現しているのですが、それを恐れるな、とまずは言いたい。

いままでのノリから別のノリへ引っ越す途中では、居心地の悪い思いをするかもしれない。でもそれは、いまより可能性をたくさん描けるようになるための変身過程だと捉えてほしいのです。

では、勉強を深めると浮く、キモくなるのだとして、周りのノリから意識的に距離をとるには、どうしたらいいのか。この本では、そのためのメソッドを「アイロニー」と「ユーモア」という二つの概念によって説明しています。

アイロニーとは、ものごとの根拠を疑うこと。

会話のシーンで考えるならば、話のちゃぶ台をひっくり返すような発言をすることですね。「不倫は悪だ」とみんなが話しているとして、「本当に悪なの?」と突っ込みを入れるような発言。

他方でユーモアとは、別の視点を持ち込んで、話を転々とさせること。本書で挙げた例では、たとえば「不倫は音楽のようなものだ」と、ボケるような発言をすることです。

こうした発言をする人は周囲のノリから浮くし、キモくなります。しかし、アイロニーとユーモアこそが勉強の第一歩であり、自由のための思考スキルに対応している、というのが僕の考えです〉