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ライフ

社長が「愛人問題」を片付けず、家族が相続で大モメになった話

新・争族(あらそうぞく)の現場から①

トラブルの先送りがより大きな損失を生む――。

企業経営ではよくある話だが、相続に関してもそれは同様。平時にはなんとか押さえ込まれていた難題が、突然の家族の死によって一気に表面化。しかも、一旦諍いが始まると、それまでの我慢していた分、勢いよく爆発することは、よくある話。

相続を巡る家族のもめ事を紹介する本連載。今回紹介するのは、父の死後、家族間のたまりにたまっていた不満が爆発し、相続でもめたケースだ。

●登場人物
被相続人:父(社長) 大阪を中心に飲食ビルを経営
相続人:母(58歳)、長男(25歳、次期社長)、次男(21歳)
他:30代女性事務員、社長の妹(55歳、パート)
●遺産;自宅9,000万円、銀行預金7,000万円、自社株評価500万円、他駅前の不動産多数
※法人は不動産を所有せず、社長が保有する不動産の管理のみを行っている会社

父が亡くなった途端に争いがはじまった

今回の物語は、大阪を中心に何か所かビルを保有しているビルオーナーが、被相続人です。長年にわたる飲酒が原因で肝臓を悪くしており、60代前半で突然急死しました。

社長個人が、自分で保有するビルを管理する会社を経営しており、そこで母(妻)を役員として、長男を事務員として雇っていました。それ以外の社員は、30代の女性事務員が1人。ちなみに次男は社長と折り合いが悪く、北海道で一人暮らしをしています。

父は敏腕経営者で、自分の母の相続で得たビルを飲食ビルとして大成功させていました。会社があるビルも、築年数はかなり古いものの、駅から徒歩2分程度と立地もよく、地下1階から7階まで著名なチェーンの居酒屋がテナントとして入居しており、連日にぎわっている飲食ビルです。

唯一の問題は、社長の妹もそのビルの土地を登記上共有しており、その権利に関して以前からもめていたこと。社長が賃貸収入を、土地の共有者である妹に払っていなかったのです。妹が離婚をした頃から、金銭的な要求を兄(社長)にするようになっていました。

ただ、双方弁護士は立てておらず、社長の会社で働いている女性事務員が、間に入って話し合いをしている最中に社長が亡くなったのです。

 

社長の妻は現在病気を患っており、全く出社していません。次男も会社の経営には全く興味がなかったので、長男が後継者として会社を継ぐことになりました。

四十九日も終わり、一息つくと新社長である長男による「粛清」が始まりました。まずは、30代の女性事務員の解雇です。理由はこうでした。

「社長は愛人としてあなたを雇っていたが、実際は何も仕事をしていないじゃないか」

たしかにこの女性事務員、仕事らしい仕事はしていませんでしたし、社長が個人で保有している住居兼テナントビルの1室に社宅という形で住んでいました。事実上、愛人といって間違いないでしょう。会社でも、社長と女性事務員は同じ部屋でしたから、密室で何をしていたのかはだれにもわかりません。

病気の母のことを心配しない社長に、長男は常々不満を抱えていたのでしょう。解雇と同時に、事務員がそれまで住んでいた部屋からも出て行け、と通告しました。