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新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感

もっと光を当てるべきことがあるだろう
原田 隆之 プロフィール

また、容疑者のパーソナリティを考えると、そうした過程のなかで、不遇感や世間に対する恨みのような感情を募らせていったのかもしれない。

たびたび自殺を口にすることもあったようで、だとすると本件は、無辜の被害者を巻き込んだ「拡大自殺」としてもとらえられるかもしれない。

一方、もし容疑者に対して、適切な支援がなされていたのであれば、孤立を深めず、疎外感や世間に対する恨みなどを募らせることなく、適切な場で能力を発揮して、充実した毎日を送ることができていた可能性がある。

〔PHOTO〕iStock

わが国では、特に大人の発達障害者に対する支援が著しく欠如していることが大きな問題である。

このように、本件において、仮に障害、パーソナリティ、環境(支援の欠如)が相互に影響しあって犯罪という結果につながったのだとすると、後の2つを十分に考慮することなく、まだ情報も十分に明らかになっていない段階で、「発達障害」というレッテルだけが新聞の見出しに踊ったり、テレビで連呼されたりすることは、大きな問題である。

発達障害という診断は、多数者とは異なる少数者を異端者として排除するためのレッテル貼りであってはならない。また、学校や職場において、多数者の型に無理やり嵌め込むような、教育や治療の対象とするためのものであってもならない。

 

それは、本人が「生きづらさ」や「生活上の困難」を抱えていることを示す目印となり、早期から継続して、家庭、学校、職場、社会で、本人の個性や多様性を尊重しながら、「生きづらさ」をなくすための適切な支援や治療が受けられるようにするための指標となるべきものである。

このような事件が起きるたびに、われわれの不安を鎮めるため、安易な理解を求めて容疑者の障害をいたずらにクローズアップすることは、傷害への偏見や排除につながる安易なレッテル貼りそのものであり、メディアはそのような態度を厳に慎むべきである。

1 Bonta et al. The psychology of criminal conduct. 2016.
2 法務省 平成28年犯罪白書
3 厚生労働省 平成27年患者調査
4 厚生労働省 発達障害者支援法の改正について
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf
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