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新幹線殺傷事件「発達障害と犯罪」を強調した報道への大きな違和感

もっと光を当てるべきことがあるだろう
原田 隆之 プロフィール

犯罪の要因とは何か?

精神障害や発達障害が犯罪の原因でないとすると、何を犯罪の原因であると考えればよいのだろうか。

同じ問いを別の言い方に直すと、精神障害者であれ健常者であれ、犯罪者とそうでない者を分ける要因とは何だろうか。

そのような要因こそを、犯罪に関連する要因(あるいは犯罪の原因)として考えるべきである。

カナダの犯罪心理学者アンドリューとボンタは、膨大な研究データベースから、犯罪に至る者とそうでない者を分ける要因、すなわち犯罪のリスクファクターを8種類見出し、それらを「セントラルエイト」と名づけた1

セントラルエイトの概要は、表のとおりである。

今回の事件においても、その背景や原因に迫りたいのであれば、これらの要因を一つひとつ丁寧に検討すべきであるのに、「発達障害」だけに着目することは的外れも甚だしく、真の犯罪の動機や原因に迫ることができない。

 

発達障害のとらえ方

このようにビッグデータを見たとき、つまりマクロな見方では、発達障害と犯罪には直接の関連がないことがわかった。しかし、何も発達障害と犯罪はまったく関係ない、と切り捨てているわけではない。

個々のケースをミクロで見たとき、発達障害が犯罪の背景としては無関係でないケースもなかにはある。

ただし、その場合も発達障害を単独で犯罪の要因として見るような単純化した見方ではなく、セントラルエイトとの関連を丁寧に分析するべきである。

例えば、先の番組でも、容疑者の生育歴として、両親との不和、不登校、対人関係の悪化などが挙げられていたし、暴力を容認するような価値観やパーソナリティについても簡単に触れられてはいた。

つまり、本件の背景として光を当てるべきは、発達障害という目立つ要因だけではなく、家庭や学校、そして職場での不幸な対人関係や疎外感などを背景にして、障害を持つ容疑者が徐々に行き場をなくし、追い詰められていった過程のほうであろう。

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