メディア・マスコミ 不正・事件・犯罪

「もうおねがいゆるして…」目黒5歳虐待死はなぜ防げなかったのか

二度とこのようなことが起きないために
森山 誉恵 プロフィール

年間84人もの命が奪われている

今回の結愛ちゃんの事件に限らず、児童虐待の通報は後を絶ちません。

平成28年度中に、全国210ヵ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は122,578件で、これまでで最多の件数となっています。1日に約300件以上になる計算です。

さらに平成29年の厚生労働省が発表したデータによると、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの子どもの虐待死事例は、心中以外の虐待死が52人、心中による虐待死事例は32人にのぼり、1年間で合わせて84人の子どもたちが心中または虐待死で命をなくしています。

ニュースで見かけるよりもたくさんの子どもたちが、虐待によって命をなくしている現状があるのです。

 

なぜ一時保護を解除し、自宅に戻したのか

今回、多くの人が疑問に思ったのはおそらく「なぜ何度も通報があったにもかかわらず、結愛ちゃんの一時保護を解除し、自宅に戻したのか」という点ではないかと思います。

実は虐待の通報があっても、そのすべてが保護されるわけではありません。

平成27年度、相談対応した約10万件のうち、一時保護されたのは約17%に過ぎず、さらにその中で施設入所等に至ったのはたった4%にしかすぎません。

つまり、虐待通報をしたとしても、96%は家庭に戻されているのです。

厚生労働省「第5回子ども家庭福祉人材の専門性確保WG」
拡大画像表示

私たちも長年児童養護施設などに保護された子どもたちの支援をしてきましたが、中には何年も虐待を受けていたにもかかわらず、発見されなかったり、保護がされず深刻な心の傷を負ってしまっていたり、長年にわたって命の危険と隣り合わせて生活していた子どもたちもいます。

十分な栄養、十分な学習環境などが保障されず、施設に保護されてからそれまでできなかった支援を補う形で活動をしていますが、「もっと早く発見されていれば」「もっと早く支援ができていれば」と思わずにはいられないケースがたくさんあります。

この背景の一つには、児童養護施設や里親などが足りていない問題があります。対応している児童虐待数は25年間で約120倍に増えていますが、里親や施設数はほとんど変わっていないことが以下のデータからわかります。

里親・ファミリーホームは約3倍近く増えているものの、もともとの数が少ないため、約4000人分の受け皿しか増えておらず、10万件以上の虐待対応の受け皿としてはあまりにも少ない状況です。

厚生労働省「第14回 新たな社会的養育の在り方に関する検討会」
拡大画像表示

現在約4万5千人の子どもたちが各種施設や里親に暮らしていますが、その受け皿が増えなければ、虐待通報があっても家に戻される子どもたちは増加の一途をたどります。

一方で、日本では里親・ファミリーホームの数を増やす予定ですが、乳児院をはじめとした施設形態は今後増やさない方針を掲げています。2017年7月には、厚生労働省が未就学児は施設入所を原則停止すると発表しました。

今後は里親が増えない限り、受け皿は増えなくなってしまいます。受け皿自体が足りない中で、里親の増加数だけに頼っていいのか、悩ましい状況でもあるのです。

新メディア「現代新書」OPEN!