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霞が関「証券市場の番人・セック」知られざる25年目の挫折

カリスマトップが去って、組織が劣化
現代ビジネス編集部 プロフィール

村上世彰、ヤフー案件の失敗

カリスマ委員長が去ったセックの勢いに陰りが見え始めたのは、データ上でも明白だ。例えば17年度の告発件数はわずか4件にとどまり、1年で最大15件も告発した佐渡時代とは比べものにならない。

つい最近も自動車部品会社の元社外取締役のインサイダー取引を摘発し、企業のガバナンスに警鐘を鳴らしたが、その一方で今年4月には、強制調査した旧村上ファンドの村上世彰元代表らによる相場操縦疑惑の起訴が見込めないとして告発を見送り、5月にもヤフーによる株式公開買い付けをめぐるインサイダー疑惑を同様の理由から告発を断念する事態になっている。全国紙社会部デスクは「セック神話の退潮を示した出来事であり、やはり佐渡氏の抜けた穴は大きいと言わざるを得ない」と話す。

佐渡体制下のセックには、証券犯罪のイロハを学ばせようと検察庁からエリート検事が相次いで送り込まれるのが通例だったが、それも今や昔。「出向組の検事が検察庁に戻っており、セックの戦力ダウンは否めない状況にある」(経済ジャーナリスト)。そして、広報事案が減少し、閑古鳥が鳴くような役所には記者たちも寄りつかなくなる。

 

証券市場の危機

組織の盛衰に直結する定員削減の波にあらがえない状況だ。佐渡氏が退任した16年度はセック史上で最多の411人にまで増えたが、17年度には406人と初めて減少に転じた。18年度には超高速取引やアルゴリズム取引など市場の新たな動きに対応するため1人の増員が認められたが、それでも全体としては402人とさらに定員減となった。

「摘発件数の減少は東芝案件に精力を傾注した反動ではないか。佐渡氏という鬼軍曹が抜け、攻めの姿勢も弱くなっている」。セックを長年取材してきたジャーナリストは、監視力の弱体化が不正取引の増大を再び招きかねないと指摘する。

創立25年を経た証券市場の番人の喫緊の課題は、「佐渡ロス」を克服し、新たな番人像を確立することではないか。そうしなければ、証券市場に巣くう強欲の輩たちの跋扈を封じることはできない。

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