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「片付けてくれないお妻様」が「片付けてくれるお妻様」になるまで

凸凹夫婦の家庭改革メソッド【4】

現代ビジネスの好評連載を書籍化した『されど愛しきお妻様』。おかげさまで売れ行き好調ではあるのですが、「奇跡の夫婦の物語」と捉えられてしまったことが残念と同時に、もっと実践的な内容も盛り込めばよかった、と反省。というわけで、どんな「すれちがい」のあるご家庭にも応用可能な超・実践的スピンオフ連載待望の第4回です。

*バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/series/daisukesuzuki

片付けられないのは、片付いてないからだ

連載4回目にしてようやく本題かよ! というツッコミをかわしつつ、不定形発達なパートナーとの家庭改善メソッドの一発目は、我が家のお困りごとの本丸だった「部屋が汚ねえ!=お妻様が部屋を片付けてくれません」である。ものの試しにAmazonで「片付けられない」で検索したら、642件だそうで。スゲーな……。世の中にこれだけ片付けられないことに困っている人がいるということになるだろうが、果たしてその中に、こんな提言はあるだろうか。

「片付けられないのは、片付いてないからだ」

ふざけてない。

少なくともこれが、我が家が辿り着いた結論の入口だ。これじゃ禅問答なので、ここは高次脳が酷かった時期の僕の当事者経験から、お妻様(たち)の「片付けられない感」を翻訳してみよう。

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あれは僕が脳梗塞で倒れて緊急入院してから1ヵ月ぐらい経った頃、当時抱えていた漫画原作仕事の「原作者急病のためお休みします」から打ち合わせだけでもリスタートすべく一時帰宅した僕は、それまでの人生で未経験の思考フリーズ現象に陥った。

1ヵ月に渡って僕という掃除の主を失ったリビングの床は、お妻様の脱ぎ捨てた物、洗って畳んだ洗濯物、漫画本、コンビニのビニール袋や中身の無い封筒、公共料金の請求書、化粧品、病院から貰った入院説明のパンフ、猫のおもちゃ、あらゆるもので覆い尽くされ、その隙間からかろうじてフローリングの床が見えるという状態に陥っていた。ちゃぶ台の上も、物で一杯。

その中を縫うようにして駆け巡る猫ども……。もちろんこんな状態で掃除機なんかかけられるはずが無いから、猫とともに舞い散る毛玉! 

嗚呼、無職道のプロであるお妻様は僕の入院から一日も欠かさずに面会時間一杯一杯で病院に来てくれていたから、元々片付けられないのに加えて片付ける時間の余裕も心の余裕もなかったのは分かる。分かります!

けれど、この惨劇館を前に、病院から持ち帰った重いスポーツバッグを降ろした(落とした)僕は、放心して座り込んでしまったのであった。

まずは病院から持ち帰った荷物でパンパンのスポーツバッグを開けて、洗い物は洗濯機に、仕事の道具は仕事部屋へと持っていき、担当編集者の来訪と打ち合わせに備えなければならないのに、僕の思考は完全に停止して、何をすることもできずにしばし座り込むしかできなかった。

どうすればいいのかわからないのだ。病前の僕だったら、まずお妻様に激烈文句をぶちまけた後に、こうしたはずだった。

 

手始めに、床一面の物を適当に押しやって、自分の座るスペースと散らかった物を分別するスペースを作り、大型のゴミ袋を用意する。次にそのスペースを使って、散らかった物を、明らかなゴミ、書類、本、洗った衣類、汚れ物、食器などと、同じ系列の物ごと1ヵ所にまとめて種分けしていく。あらかた分別が終わったら、それぞれの物を定位置に戻しつつ、それぞれの中で改めて捨てる物を分別。

こうして床や机の上の物がなくなったら、だいたい広いスペースができるとその上でゴロゴロやり出す猫どもにご退場頂き、掃除機かけて拭き掃除。ラストは捨てる物を行政指定の通りに分別。パーフェクト!

ところが、高次脳機能障害の当事者として「注意障害」持ちとなった僕は、そうした手順のすべてができなくなってしまったのであった。

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